よくある演劇部の話②

気まぐれ顧問の気まぐれで、夏休みの終わりに創作に舵を切った「よくある演劇部」。最初の上演は文化祭。3週間後である。だが台本はない。夏休み中、ある既成脚本の稽古をやってきた部員たちは、どうこの状況に対処してよいかわからない。しかし気まぐれ顧問は楽天的である。「まあ、1週間もあれば書けるだろう。元ネタはあるのだ。」

 

この顧問が前の学校で、文化祭2週間前にならないと台本を書き始めなくて、部員たちを大いに困らせていたことを、現在校の部員たちは知らない。顧問は1人心の中で思う。「3週間前に書こうと思うなんて、オレも成長したものだ。」

 

実際、顧問は2週間前には台本を書き上げた。そして鼻高々に印刷して、部員たちに配った。その台本が、かつて稽古していた既成台本と比べてどうだなんて、もちろん部員たちは言わない。顧問は言う。「ほら2週間も稽古できるじゃないか。余裕だな。」

 

その台本が、スタッフ的に多くを要求しない、シンプルな劇ならいいのだが、やたらト書きが書き込んである。「壮大なセットと華麗な衣裳」とか「超高速で走る」とか「まばゆい光を浴びる」とか「一発で泣かせる曲、でも誰も知らない曲、できれば中南米の」とか書いてあって、舞台監督生徒を唖然とさせる。結局、文化祭1週間前の貴重な土日はセットや小道具、衣裳作り、選曲に充てられることになる。

 

   

※写真は全てイメージです。

 

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