わりとよくある演劇部の話②

2年生は修学旅行に行った。顧問も2学年所属なのでついて行った。いや、引率した。

 

顧問は、修学旅行の4日前には部活を停止し、部員が健康に配慮する時間とお菓子を買いに行く時間を作った。「修学旅行は健康とおいしいおやつがなくてはなくては楽しめない。」とひどく当たり前のことといいかげんなことを言ったが、よくできた部員たちは、「なるほど」と言う表情を浮かべてうん、うん、とうなづいていた。しかし当の顧問が修学旅行中に体調を崩したことは、知らない。(知っているけど知らないふりをしているのかもしれない)

 

また顧問はこうも言った。「君たち、修学旅行と言えば、部活の朝練だよね。ほら海岸を走ったり、海に向かって声を出したり。ぼくはそんなことやらなくてもいいと思うんだけど、やっぱり君たちはやりたいよね。だからぼくも協力するよ。」 それまでうんうんとうなづいていた部員たちのうなずきが一瞬止まった。でもよくできた部員たちである。すぐにその遅れを取り戻すかのように今度は高速でうんうんうなづき始めた。本当は朝早く起きてしまうので、それにつきあわせているのだ、と知っているけど知らないふりをしているのかもしれない。

 

顧問は修学旅行に行く前困っていた。どうも演劇部以外に朝練をやる部活がないようなのだ。あの野球部も、サッカー部も、バスケットボール部も、バレー部でさえ、やる気配がないのである。これでは完全に浮いてしまうではないか・・・。

 

当日がやってきた。1泊目は民泊だったから3日目の朝である。一般生徒がビーチに出られるのと同じ時間にビーチに集合となった。目立たないためである。ビーチの隅っこの方に移動し、砂浜を追いかけっこする設定で走ったり、恋人同士がビーチで戯れたりする設定で走ったりした。やはり傍からは異様に映っただろう。そして演劇部としてはかなり控えめな発声でしめくくった。約15分。朝練は終わった。「これでいい思い出作りになっただろう。」 顧問は満足げにビーチを後にした。この後体調が急速に悪化していくことは本人も知らなかった。

 

    

控えめに準備体操をする。

 

 

「待ってぇ~♡」とか言いながら追いかけっこをする。

 

ビーチの眼前でエア水掛けをやる。

 

 

何やってるかよくわからない。この時少し頭が痛かった。

 

※写真はすべてイメージです。

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