神奈川の未来は明るいか?
関根 静夫
◎神奈川大会を覚えていますか?
あの、暑い日。いよいよ始まった全国高等学校総合文化祭神奈川大会。演劇専門部の舞台は東京の市部と境を接する神奈川県北部、相模原でした。広い相模原市の南端に位置する相模大野は東京の新宿や八王子、県の行政の中心地横浜からも一時間かからずにおいでいただける交通の便の良いところです。
前年の「福岡県」からの引継ぎの挨拶で当時の神奈川県高文連演劇専門部・藤田耕平部会長は「何もない相模原ですが」と謙遜していましたが、実のところ相模原市は人口六十万人、会場のある小田急線相模大野駅周辺には数多くの大小店舗、その駅から徒歩5分ほどのグリーンホールの周りは市立図書館、伊勢丹を核とした商業施設と「何でもある」ところなのです。しかし、それでも「ない」と紹介しなければならないのは全国に誇る「何か」が残念ながら足りないからでした。(でも、本当に何でもあるのになぁ)
そんな相模原で、全国大会前の関東大会をプレ大会と位置付けて準備を始めました。従来あらゆる面で神奈川の高校演劇を支えてい
ただいた県立青少年センターを離れ(客席数が全国大会の会場としては少ないため)、グリーンホールで二つの大きな大会をたて続けに運営することになりました。
関東大会では初日の夜から雪が降り始め二日目の運営を心配することになりましたが、全国大会はいろいろな不安を抱えながらも松田由紀子部会長の下、天候に恵まれ(?)無事に終了、福井県へバトンタッチすることができました。このバトンには福井県へのエールと、自分たちの仕事が終わった安堵感とが入り混じっていました。私たちの生々しい感想や反省も鮮度が落ちないうちに一緒にバトンタッチできれば良かったのですが…。
全国大会で緊張することのひとつは大会直前から始まる全国事務局、審査員との打合せでしょう。何と言っても開会目前、時間制限あり、開催県としては準備完了の段階で、「え!」というような告白があったりして…。運営の「柔軟性」、「臨機応変」の対応が必要でした。四県引継ぎ会議では話題にならなかった問題点も持ち上がります。
でも、徳島県の皆さん、「始まったものは必ず終わる」(もう何度も紹介しました、本県連盟顧問の先生の言葉)、そして「喉もと過ぎれば熱さ忘れる」ものなのです。もう一息、ご健闘をお祈りします。
◎神奈川の未来は明るいか?
ここ数年神奈川県では県内中学卒業者数の急減で県立高校の再編計画が進んでいます。既に、統合の結果十校程が減少し、今後も数
校の統合が見込まれます。神奈川県の人口から考えて、高校の数が
半減することはないでしょうが、横浜市のような生徒数の急減地域では十校に一校程度が再編の対象となっています。
このように生徒数減少→学級数減少→学校数減少ときて、あとは教員数の削減という筋道が見え隠れしています。県立高校では、ここ何年も新規採用はほんの僅かで、職場に二十歳台の職員が皆無ということも珍しくありません。ベテランは頼もしい存在ですが、ベテランの経験を伝えていく若手も必要でしょう。
演劇部の顧問にも当然のことながら若手はいない(県内の顧問の皆さんごめんなさい、若手と自認なさっている方はおいでです)のです。もう、演劇部顧問の平均年齢は四十歳を超えているでしょう。これまで四十年余りかけて積み上げてきた神奈川の高校演劇を引き継ぐ世代はいつ現れるのでしょうか?緩やかな世代交代を望むことは許されそうもありません。ベテラン中堅が活躍できて、若い力も発揮されるような明るい未来像を神奈川にも!。
(神奈川県高等学校
演劇連盟・事務局長)
**********************************
愛知の生徒講評委員会について
水野 秀治
昨年度の福井大会において試行された生徒講評委員会は、大きな成果をもたらした。そして、来年度から正式な活動として認められることになりそうである。
その一方で他県の方は、意義は認めつつも、どうやって指導すればよいか、やや困惑気味といった様子である。
「こうすればうまくいく」などというマニュアルがあるわけではないが、何度か指導を経験すると流れが見えてくる。それをここに紹介する。
<講評委員会の指導>
講評活動は、生徒の主体的な議論を前提に行われるものであるから、顧問はその状況を見つめていればよいのであるが、より実のあるものにしていくためにはそれなりの指導が必要となる。
最初生徒は技術的な部分ばかりに目をうばわれがちである。照明がきれいだった、○○役の人がうまかった等々。そこをまず指摘する。「もっと劇全体を見よう。」
そうすると生徒は大抵、
@ 評論家じみた発言に終止する(これは不条理劇だ、以前観た○○に比べてどうだった、等)
A テーマにこだわる(AとBとどちらがテーマなのか)
のどちらかに陥る。そこでまた軌道修正。「君達が感じたことをまず素直に言葉にしようよ。」途中で難解な劇があると、議論が進まなかったりする。こうしたときも顧問が適度にアドバイスをする必要がある。
というような過程を経て、生徒は高校生の目線で劇を素直にとらえ、広い視野で劇を観ることができるようになる。このプロセスがまたひとつのドラマであり、そのドラマにいささかでも貢献できたことに講評担当顧問は大きな喜びを見いだすのである。
が、毎回うまくいくわけではない。大会によって色々な事情を抱え、悩みはつきない。以下愛知県の各大会における講評委員会活動の実態を報告する。
<地区大会の現状>
地区大会では上演校から1名ずつ委員を出し、講評活動を行う。各校の技術レベルや講評に対する認識や経験に差があるから、事前の委員会では、講評に対する共通認識を持つことに主眼がおかれる。論より証拠と、最近はビデオを見せて模擬講評をすることが多い。
実際の講評では、しゃべる子、しゃべらない子、マイペースの子など様々である。
1日の上演が終了すると顧問講評委員との意見交換(「すりあわせ」と我々は呼んでいる)を行う地区が多い。
講評委員は担当する学校についての意見をまとめて翌日朝までに講評文にする。この講評文を担当顧問が朝チェックする。書き直しを指示せねばならないこともある。 県大会出場校は顧問と講評委員の合議で選出される。選出方法は地区により様々であるが、この中で足の引っ張り合いになったり生徒対顧問の対立図式になったりと、話題の多いところである。
<愛知県大会の現状>
愛知県大会は5日間。この間に講評委員が成長していく様は正にドラマチックである。
県下9地区から各1名、担当地区実行委員から講評担当が1名、計10名の委員からなる。多くは地区講評委員の中から選ばれるが、意気込みにはかなりの差がある。
地区大会からの間がないことから事前の委員会は1回だけで、模擬講評もできない。
講評文はやはり苦労する。毎日の終了が19:30ごろ、 翌日の集合は 9:00、中には家から会場まで2時間というような生徒もいて、その中で講評文を書き上げるのは並大抵の努力ではない。
顧問講評は5地区から1名と県外から1名の6名で構成。専門家は3名、中部大会代表を選ぶ最終選考には関わらず、「助言者」として自由な立場からアドバイスをいただいている。1日ごとにすりあわせを行う。生徒にとっては貴重な経験で次の講評への糧となる。
最終日には顧問と生徒が最終選考を行う。人数にアンバランスがあるが、その結果が偏ることはない。
講評委員会の指導は易しくはないが、特別な技術を要するものでもない。まずは県大会あたりから一度試みていただくことが大切である。この駄文が講評委員会活動を展開する上での参考となれば幸いである。
(中日高演連愛知県支部長)
*****************************
三十周年に向けて
遊木 純一
奈良県高等学校演劇研究会も今年で創立二十九年め。来年度には三十周年の節目の年を迎えます。ここ十年ほどの間に奈演研には、実に様々なことがありました。
九四年度から〇四年度までの十一年の間に、奈良県は、近畿大会三回、全国大会を一回開催したのです。十一年で四回という開催回数は、加盟校も、部員数も少ない奈良県には大変な負担であったことは間違いないのですが、逆にその体験から、奈良県の高校演劇は大きく成長させていただけたともいえるのではないかと思います。
一九九四年度の近畿高総文祭とのドッキング大会、翌一九九五年度の分離大会と二年連続で近畿大会を開催した頃は、一つのことを決めるのにも議論を重ねて大変な労力を費やしており、運営のノウハウもわからぬまま、とにかく先催府県の例の通りに慎重に事を進め、それでも、反省点を残したことも多々ありました。当時は生徒たちの取り組みも、まだ半数近くは既成脚本に頼っていたように記憶しています。そんな折、二年目の近畿大会を年末に控えていた一九九五年九月、突然発覚した県立高校の演劇部顧問による不祥事は、全国に報道され、県内では高校演劇人口を激減させる結果をもたらし、一九九七年度に控えていた全国大会(奈良大会)の運営まで危惧させることとなりました。
しかし、その逆境で、しかも小規模な会場、少人数の演劇部生徒・顧問が乗り切った全国大会の自信は、その後の奈演研の活動にも大
きな弾みをつけ、このころから、秋の発表会に参加する学校のほとんどが、自分たちの創作した脚本で、自分たちのメッセージをストレートに伝えようとする姿勢を見せるようになりました。その現れとして、二〇〇〇年度には、奈演研創立二十五周年記念として、県内の高校を南北二グループに分け、合同公演を開催したりもできました。さらに、昨年度八年ぶりに開催した近畿大会では、以前の運営のノウハウの蓄積もあってか、以前のようにみんなが右往左往することもなく、スムースに大会運営に当たることができました。
質的にも大きく向上してきた奈良県の高校演劇は、まだ、残念ながら、近畿大会での最優秀賞が一度もないのですが、かつては手の届かない遠いところにあった「近畿」が、今ではすぐ目の前まできているように感じています。
ただ、楽観ばかりしてもいられません。ここ数年、加盟校の中に部員難から大会に参加できない学校や2〜4名で芝居を作っている学校が増えてきています。また、部活動予算がつかず、加盟費が負担できないため非加盟を余儀なくされている学校も発生しています。そんな中、昨年六月には県立高校の統合計画が発表され、加盟校の中からも数年のうちに統合という名の下に事実上その存在がなくなることが決まっている学校もできてきています。奈演研は現在加盟校二十六校。これが、どこまで減るのか気が気ではありません。
一方で、今年、新加盟してくれた学校もあります。公立校一校、私立校一校、そして、なによりも特筆すべきは、障害児諸学校から県立ろう学校が加盟してくれたことです。ろう学校は、以前から研修大会などに賛助出演していましたが、今年から正式に加盟されました。ストーリーを伝える時に、とかく音声特に台詞に頼りがちな私たちに、ろう者の方たちの身体表現を中心にした表現は何らかの示唆を与えてくれるのではないかと大変期待しています。
最後に、先述の不祥事にあえいだ当該校についてですが、さすがに事件後、灯が消えたようになって、一時は部員が一名という状態になっていましたが、三年前、どういう経緯か(たぶん偶然?)事務局長である私自身が当該校へ転勤となり、その後、甦生して、県大会を初め、さまざまに活躍させていただいているという近況をお伝えしておきたいと思います。
(奈良県高等学校
演劇研究会・事務局長)
****************************
山口県高演協
二十周年記念誌完成
村岡 圭吾
〈山口県高演協発足二十二年〉
県の高演協は昭和五十七年、次年度の全国高等学校演劇大会を山口県で引き受けることとなり急遽、山口県高等学校演劇協議会として発足されました。早いもので二十二年の月日がたちました。もちろんそれまでにも県内各地区で高校生の演劇活動は盛んに行われていましたが、全国加盟により、各地区単独で行われていた大会がまとまることとなりました。
そこで、二十二年を迎えた今年、めでたく二十周年記念誌が完成しました。(計算合わないけど・・・)昨年度末から編集作業に追われ、事務局を引き受けて四年目にして大役を仰せつかり、今、完成冊子を手にしながら感慨にふけっています。
〈県内の主な活動と課題〉
山口県は現在、加盟校三十五校(昨年より一校減少)で県内を四地区に分けて地区大会を開催しています。この二十年の歴史の中、全国大会へは五回出場で(開催県代表含む)、特に平成十二・十三年の連続出場は山口県の多くの演劇関係者に勇気を与え、県内全体のレベルアップも感じて来ています。
毎年開催している演劇講習会で昨年は平田オリザ先生に来山していただきました。一日のみの開催でしたが、多数の参加があり(事実参加制限を設けるほど)、笑いあり、発見あり、感動ありの講習会でした。
県内では合同公演も盛んで毎年行う地区もあります。また、学校ごとにいろんな地域の催しに公演参加することも多く演劇のすそ野を広げようと奮闘しています。(私事ながら我校も九月には町の文化協会の記念式典に一本、十一月の福岡での国民文化祭に一本出演予定です。忙しい・・・)
会場費の高騰の問題がありましたが、各校顧問の奮闘や平成十八年の国民文化祭の引き受けなど追い風もあり、省庁との関係が密になってきています。そのおかげで会場費が無料という地区も増えてきました。
しかし、部活動縮小、部員減少などの逆風から加盟校数が減少し、上演校数も昨年より少なくなってきました。(加盟校三十五校の内、上演校数二十七)そのため、県大会の出場数が減少したので、地区大会上演四校から一校県大会出場という申し合わせを今年度から三校から一校を選出という風に改正しました。それにより何とか県大会出場枠を広げることが出来ました。参加する学校にとっては朗報となり、顧問や生徒のやる気も出てくるのではと思っています。(県大会上演は昨年七校から八校へ)今後は、加盟していない学校にもっと積極的に働きかけて加盟校数の減少に歯止めをかけていきたいと思います。
また、中高一貫校の出場をどう扱うかも現在議論を呼んでいます。(とりあえず、今年度から見切り発車のような気もしますが、県大会までは出場を認めることで了承を得ています。)
全国での試みには賛否両論ある生徒講評委員会も県内レベルの開催では大きな問題もなく、生徒の演劇を鑑賞する眼を養うには良い機会のように思います。(実施四年目)もちろん、生徒・顧問の出張旅費など問題もありますが・・・。
全国大会の年度内開催については教育的配慮から賛成という意見が県内では多くありました。しかし、高文連との繋がりが強い山口県としては現在の総合文化祭との兼ね合いを考えてこのことは慎重にすすめて欲しいとの意見も多かったです。
全国高演協への加盟が他県に比べ遅く、どちらかというと全国的な演劇界の動きに疎い山口県ですが、演劇の持つすばらしい表現の力にふれて学校生活を生き生きと送っている生徒に後押しされながら、県内の高校演劇を盛り上げ、山積している多くの問題を解決していきたいと思っています。
(山口県演劇協議会・事務局長)