第50回高校演劇全国大会を観て
金 泰 希
私にとって、初めての全国大会!客席にいる私の方が胸が高ぶり、まるで自分の舞台の幕が開く前のようなときめきと緊張感を味わった。みんな個性的で、面白く、できれば11作品すべてに賞をあげたかった。ひとつ欲を言えば、全体的に一番の基本である台詞が聞きづらかったことかな。
「飛び人〜とびびと〜」
この作品を一番最初に見ることができてラッキーだった。高校演劇に対する考えが変わったような気がする。上手い、下手は関係なく、皆で作るすばらしさを、皆が皆を支え合うことを感じさせてくれる作品だった。少し残念なのは、声のトーンが高すぎ、台詞が聞き取れなかったことである。きちんと伝えられる声を持つよう努力してほしい。
「チキン・カレー」
台本を読んだ時点から気に入っていて、期待が一番高かった作品の一つ。孫娘と祖母の関係をどう表現してくれるのかがとても楽しみだった。私は尾野珠美と土屋華子の演技を見て、とても日本的な表現だと思った(彼女たちは意識していないかもしれないが)。好きなのに、ドライな関係。家族だけれど、どこか距離感がある。そんな二人の心の距離が知らず知らずに縮まっていく。そういった点がさりげなく表現されていたような気がする。
残念だったのは、セットが観客との間に立つ小さな壁のように作られていて、全体が見づらかったことだ。開かれた舞台にして、見やすく工夫したらもっと良かったのではないかと思う。
「超 正義の人」
すべての部分で合格点、高得点という結果の作品だった。だが私はあえて、そのすべてが合格点であることがこの作品の魅力をそこなっていたのでは、と言いたい。最優秀だからこそ、駄目出しを贈ってあげたいのだ。芝居というのは不思議な生き物で、ある時は完璧さを、ある時は情熱を求める。何が起きるか分からないから見る人はどきどきしながら舞台に引き込まれるのだと思う。適温なら安定感は与えられるが、ときめきは生まれにくい。今の力を土台にしてもっと弾けてほしい。きれいに磨かれたものより、野生の粗さが光る時もある。作新の次のステップを期待する。
「幽霊部員はここにいる」
この作品には、肝心な芯を作る前にいろんな飾りを付けたような印象を受けた。幽霊を演じる皆がパターン化された演技になってしまい、一人一人の個性が見えず、テンポの悪さを露出する結果になったと思う。演じる側のリアリティや個性などが加わったらもっといい作品になったのではないかと思う。
『Is-アイズ』
自分の中に在るいろんな自分! その構成は非常に面白いが、難しい部分でもある。いろんな自分が早口で台詞を言うシーンが多く、それが流れてしまっていて、肝心な台詞が聞こえてこなかった。全体的に急いでいるような気もした。芝居は練習すればするほど、自分たちの心地よいリズムが生まれて、相手の言葉がきちんと聞こえなくても、聞こえるような錯覚に陥る。それはちゃんと話していない、ちゃんと聞いていない証拠である。自分の順番だから台詞を言うのではなく、相手の言葉を聞くことによって、気持ちが動いて台詞が出てくるのだ。言葉を伝えることの大切さを忘れないでほしい。
「おばあちゃんのボタン」
全員の発声がきちんと出来ていて、安定感があり、聞きやすい声だった。その安定感が観客の集中力を生み、感情移入しやすくさせる。
一人二役の柴田千絵里の演技も見事だった。特に母に扮した時の落ち着いた演技は、無理して何かを作ろうとしたものではなく、彼女の中から自然に出てきたように感じられた。演じるということは自分の心をオープンにして、その心の中にあるものを引っ張り出す作業だと思う。これからも多くのことを吸収して、成長してほしいと思う女優だった。
「ライアー! ライアー! ライアー!」
ゲームのような楽しい芝居作りに面白いキャラクター!一人一人の個性が活かされていて、それぞれの持ち味が出ている作品だった。芝居は、見せることを前提に作られるのはもちろんだが、作り手が楽しむことも忘れてはいけない。演技のエチュードとしても使えそうで、さらにいいアイディアがたくさん出る作品だと思う。もっと思いっきり楽しんでもよかったのでは。弾けるパワーや明るさ、見る側がうらやましくなるような楽しさが欲しかった。
「子供の子供と子供たち」
台本にはとても大きなドラマがあるのに、舞台の上でそのドラマ性を感じることが出来ないのはなぜだろう、と感じた作品。ナチュラルな演技をしようとした努力はみえたが、それに気を捕らわれすぎたのか、芝居全体に同じリズムが流れ、議論をする場面でさえテンポの変化を感じることが出来なかった。舞台美術では、殆ど使われないのにもかかわらず、真ん中に大きく作られた教室はもったいない空間になってしまった。たえず、何が一番よい空間になるのかを考え続けてほしい。
「扉の向こうに」
晃役の鈴木匠と博役の喜島翔平の、体の使い方がよかった。声と体の動きと感情を一致させることは一番難しいことである。二人にその不安感はなく、本当に息の合ったテンポのいい演技を見せてくれた。現代から回想に戻る演出が巧妙で、舞台美術もすばらしかった。だが肝心の物語は、急に結末に向かってしまったような気がする。悩みやその答えなど、テーマをすべて台詞にしなくても見る側はわかるはずだ。台詞にした途端、彼らの居場所探しが嘘くさく感じられてしまう。後半の構成(台詞も含め)がこの作品の惜しいところであった。
「ロック」
台本の完成度は高いとは言えず、粗いというのが正直な印象だ。しかし舞台では全員のパワーを感じることが出来た。作品全体を通して、皆でリズムを作りあげている…そんな手作り感のある芝居だった。ダンスの上手さも評価できる点で、猛練習を重ねたのでは…?と思わせる出来。全員の力による手作り感とパワーと楽しさ、それがこの作品の魅力だと思う。
「てんぷら」
全体的に洗練されている台本である。舞台美術もよく、広い舞台を広く感じさせない作り方は見事だと思う。3人の演技も自然で、関係性や感情がうまく表現されていて、余裕まで感じることが出来た。キャラクターを作りすぎた印象を受けたところもあるが、全体的に気になるほどではなかった。
(女 優)