都道府県便り
福 島 県

福島県の高校演劇
〜過去・現在・未来〜

猪狩 恭博

 福島県の高校演劇コンクールは、今年でちょうど六○回目を迎えます。全国に先駆けて戦後すぐの一九四七年「自立劇団演劇コンクール」として始まり、第二回大会から職場や地域の劇団に混じって高校生も参加するようになりました。「福島県演劇コンクール」「福島県演劇祭」と名前を変えながら、一般の人たちと高校生がともに参加する形で大会が続けられ、一九八二年からは「福島県高等学校総合文化祭(演劇部門)」として高校生だけの大会となり、今日に至っています。

 現在の県大会は、一一月下旬に県内六地区持ち回りで行われています。昨年度は会津若松市を会場に、県内六地区の代表一四校が参加して開催されました。今年の六○回記念大会はいわき市常磐市民会館を会場として、一一月二三日から二五日まで開催されることが決まっています。この会館は、今では大分老朽化してしまっていますが、一九六七年に第一三回全国大会が開催された会場でもあります。

 全国大会に出場した学校も数多く、原町高校、磐城女子高校、会津高校、安積女子高校、郡山高校、小名浜高校、湯本高校、県立石川高校などがその歴史に名前を刻んできました。中でも、一九六八年原町高校が「オホーツクのわらすっこ」で、一九九四年湯本高校が「俺たちの甲子園」で、そして二○○二年小名浜高校が「チェンジ・ザ・ワールド」でそれぞれ全国大会最優秀校に選ばれたことは、特筆すべき快挙と言ってよいでしょう。後の二作品の作者である石原哲也氏は、さらに創作脚本賞も受賞しています。このような活躍は、私たち福島県の高校演劇にかかわる者にとって大きな誇りであり、目標となっています。

 次に、八月中旬に二泊三日で行われる「夏季研修会」をご紹介します。一九七八年に始まり、今年で二九回目になります。県内の演劇部生徒・顧問合わせて約二五○人が一堂に会し、ドラマ・ミュージカル・ワークショップの三部門一○班にに分かれてプロの演劇人による指導を受けます。そして、最終日にそれぞれの研修の成果を参加者全員に披露する発表会を行っています。実質的にはたった二日間の稽古で、とにかく発表できるだけのものを創り上げなければならないわけです。この「無謀な」課題に、講師の先生方の熱意に助けられ、生徒たちは生き生きと取り組んでいます。三日間寝食を共にし、芝居を創るために協力し合うことは、学校を超えて仲間を作る上でも貴重な機会になっているようです。

 以上、福島県の高校演劇は輝かしい歴史を持ち、活発な活動を続けているのですが、現状は楽観できるものではありません。福島県高等学校演劇連盟の加盟校数は現在五二であり、ここ一○年で一○校近く減ってしまいました。部員数も現在約六○○で、約一○○名の減少です。全国どこの県でも生徒数が減り、部活動の統廃合なども行われていますから、ある程度の減少はやむを得ないところでしょう。しかし、福島県の場合、石原氏をはじめとする高校演劇を支えてきてくれた先生方がここ数年で相次いで退職して現役を退いたこともあり、高校演劇全体の活力がいささか減退しているように思われるのです。

 こうした中、二○一一年には全国高総文祭が福島県で開催されることが正式に決定しました。つまり、五年後には多分全国大会が福島県で開かれるわけです。この大会を成功させ、福島県の高校演劇の活性化につなげていきたいものだと切に願っています。

(福島県高校演劇連盟
事務局長)

香 川 県

香川県の高校演劇事情

真下 拓也


 四国地区が中国地区から独立し、四国地区高等学校演劇協議会が設立されたのが、1976年(昭和51年)。その翌年から、香川県では演劇研究大会を開催している。当初、参加校数は11校であったが、年を追うたびに参加校は増え、1996年(平成8年)から2002年(平成14年)には、参加校数は20校近くまで増加した。しかし、ここ数年は、参加校数の減少が著しく、昨年度の県大会の出場はわずか9校になってしまった。私が高校演劇に関わって10年足らずなので、多くはわからないが、香川の高校演劇のなかで、画期的な時期が2回見られる。

 1回目は1987年(昭和62年)から1995年(平成7年)にかけてである。この9年間で全国大会に7回出場している。当時高松工芸高校に在籍していた「さくらももと」こと谷口尚令氏と高松高校と香川中央高校に在籍していた山本恵三氏が競うように脚本を書き、全国大会に出場した時期である。この活躍が香川の高校演劇を活性化させ、参加校の増加につながったことは確実である。

 2回目が現在である。2003年(平成15年)には丸亀高校が全国大会で文部科学大臣奨励賞を、そして昨年度は高松工芸高校が文化庁長官賞と演出賞を受賞し、香川県の念願であった国立劇場出場を果たした。丸亀高校の作品は生徒だけで脚本を作り、演出をしていったという点で特筆すべきものであった。また、高松工芸高校の作品は、顧問と生徒とが協力し、脚本を仕上げていく点や、徹底してリアルな演技を追求する点が特筆すべきものであった。全国大会では審査員の鴻上尚史氏から、「僕は、生徒達の迫真の演技に衝撃を受けた」との評価をいただいた。丸亀高校と高松工芸高校とも、高校生の日常を切り取った作品であるが、両校に大きな影響を与えたのが、隣の愛媛県の川之江高校の活躍であった。特に丸亀高校は、川之江高校の名作「ホット・チョコレート」を演じ、それをきっかけに自分達も、日常にある心揺さぶられる瞬間を演じてみたいと考え、「どよ雨びは晴れ」は生まれた。また、県高演協の活動でも、ここ数年「演劇ワークショップ」を行い、高校生の日常を演劇化する取り組みを行っており、そのことが着実に定着してきていることを示すものであった。

 ここまで読むと、香川の高校演劇は順風満帆と言えるが、問題がないわけではない。先述したように加盟校数の減少がある。やはり生徒数の減少が影響している。生徒数の減少で部員が減って活動できなくなったこと、演劇経験のある顧問が、転勤で演劇部のない学校へ行っても、部活の整理削減を考えている学校が多く、新しく部を立ち上げられない状況にあることなどが、加盟校の減少につながっている。そこで県高演協は今年度から、以下の目標を立て、高校演劇のレベルアップを図る予定である。

1.作品の質の向上

 脚本(創作、作品読み取り)、演出、演技に関する講習の機会を設ける。

2.講習などの教育機会の充実

 1.に加えて舞台技術講習、全国出場作品の流れなどを学ぶ機会を設ける。

3.公演機会の増数

 舞台に対する見識を深め、実践的な能力を身につける機会を設ける。

 今年度から新しく立ち上げる事業もあるので、どこまでうまくいくかわからないが、この時期を逃しては、という気持ちである。しかし、ここに新たな問題が浮上しつつある。財源不足である。「ガンバレ!香川の高校演劇」

(香川県高等学校演劇協議会
前 事務局長)

 

鹿児島県

事務局は一年交替。
  えっ、それで 運営できるの?

池平 和博

 鹿児島の演劇連盟の県事務局体制は、一年交替の輪番制です。鹿児島市内の公立高校十数校が輪番で県の事務局を担当します。

 えっ、それで運営できるの? と、さまざまな苦労を経験なさっている各県事務局の先生方はお思いでしょう。しかし、九州や全国の先生方にはいろいろ迷惑をかけながらも何とかやってきています。

(具体的なシステムは?)

 システムは、こうです。

1.一年目は、鹿児島市地区の事務局を担当する。同時に機関誌の編集に携わってもらう。

 (十五程度校の加盟校の地区を運営することで、実務に慣れてもらう。さらに、一年間の活動記録である機関誌を編集することで、一年の仕事の流れをつかんでもらう。)

2.二年目に、県の事務局を担当する。

 (前年度の市大会の運営を経験しているので、県大会の運営は、同様にできる。)

 普通の体制であれば、これで何とかなります。逆に、今まであまり演劇と縁がなかった初めての顧問の方が、すばらしく実務的にリードして頂けることもあります。

 しかし、思わぬハプニングで運営が滞ったり、担当者がいなくなったりすることもあります。例えば転勤・病気などは如何ともしがたいですね。そんな時のために、「常任委員会」があります。

(常任委員会が運営する)

 常任委員は、十数名の希望者で構成します。自然に長年演劇部の顧問を務めてきたベテランの先生、やる気のある若い先生の集まりになります。もちろん、前年度・来年度の事務局長はメンバーに入ります。演劇連盟の事業を実質切り盛りするのは、この常任委員会です。各人が、業務ををいくつか担当します。

 1.事務局担当、?夏季大会、?秋季大会、?冬季大会、?機関誌編集、(?九州大会…今年は鹿児島で九州大会なのです…)に別れて、各事業を2・3人の常任委員が中心になって、企画から実務まで責任を持ちます。原案は、例によって常任委員会で検討します。

 この運営委員会を年に四回開催して大会を具体化していきます。?五月の総会前、?九月の総会前、?十二月の冬季県大会前、?三月の引き継ぎの四回開きます。

 事務局は、公文発送や渉外などの実務面を主に担当します。事務局が中心になって運営するのは、九州大会につながる?秋季県大会だけです。?夏季大会、?冬季大会はほとんど常任委員が一手に引き受けます。

(今年の事務局は体制は?)

 こんな形で、ブリッジ体制で、常任委員会のサポート体制で、事務局を回していきますが、時には、うまくいかない年もあります。

 例えば、今年の事務局校で去年まで中心的に担当していた先生は、今年急に離島の学校に転勤になりました。さぁ困った。担当校では、四人の演劇事務局担当者を見つけて事務局を構成しました。事務局長には、今年転勤してきた若い先生が引き受けました。演劇部顧問の経験はなし。あとの3人も、三年担任、新採用者、新採用二年目、全員顧問は初めての経験です。

 前年度の事務局は、行事日程を決め、年度当初に発送する加盟勧誘公文と、予算案を作成して引き継ぎました。詳細な実務実行マニュアルも添えました。わからない所は、サポートについている前年度の事務局長と、担当常任が相談に乗りながら実務を運営します。

 こういう体制で5月始めに第一回の総会を開きましたが、事前の常任委員会であれこれと内容を審議していたこともあって、無事に終了できました。まずは一安心、これからも何とかなりそうです。

(輪番制のメリットは?)

 さて、こうして三十年近く鹿児島で続いてきた事務局輪番制のメリットは何でしょうか。

 一番のメリットは、事務局を経験した若い顧問の先生の中で、演劇に「ぞっぷりとはまってしまう」人が、何人か出てきたことです。現に、常任委員の中には過去の事務局長経験者が何人もいます。事務局長を経験することで演劇の面白さに目覚め、「顧問」になったのでしょう。また、意欲のある顧問には常任委員会で声をかけて、常任委員になってもらいます。実務を担当する中で演劇の面白さに目覚めてもらいたいからです。

 だから、鹿児島県の顧問の先生方はとても仲がいいです。大会のたびに懇親会で和気藹々と盛り上がります。気を遣いません。

 若手顧問が育つシステム。それが、巧まざる鹿児島の事務局輪番体制なのかも知れません。

(九州高等学校演劇協議会 事務局長)

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