第53回 島根大会によせて

 本年の全国大会は島根県松江市の県民文化会館を会場に、七月三十一日、八月一日、二日の三日間の開催である。今回より出場校一校増の最初の年であり、全国各ブロックより十二校の出場となる。増のブロックは昨年の理事会での推薦の結果、北よりとなったので今年は北海道ブロックより二校の参加となる。この全国大会にかける各校の思いは極めて熱いものがあり、例え一校でもその機会が増えたことの意義はまことに大きい。

 島根大会は全国高等学校総合文化祭(高総文祭)としては第三十一回に当たり、演劇を初めとする十八の専門部並びに五つの協賛部門によるところの、まさに総合的な一大イベントである。その中にあって演劇は第五十三回の全国大会として最終のコンクール形式を継承しながら、質のさらなる向上を目指すとともに、専門審査員による講師、各種分科会における学習、そして生徒講評委員会の活動も加え、演劇を通して共に学び合う指導者講習会の性格もまた変わることなく今日に至っている。

 全国大会の機会を通じ、全国各校の励みと研修とに大きくつながることを期待するものである。

 松江の地は、申すまでもなく風光のよい所であり、歴史と文化にも恵まれている。会場のすぐ近くに松江城があり、この地を愛した小泉八雲の旧邸もそのすぐ下である。豊かな文化の地は文化活動にはまことにふさわしく、遠隔の地よりの参加の方々にとってもよき思い出の地となるであろう。

 さて、演劇の組織の方であるが、櫻井事務局長より本年度は吉田美彦氏に事務局長が交代となる。櫻井氏には青森大会の年度当初より二年間、突然の激震のあとをうまくまとめていただいて感謝の至りである。事務局の仕事はどの団体でも雑用的な面も多く、かといって人数が多ければよいものでもない。事務局長の選出は理事であることしか条件はなく、例えば各ブロックより一人ずつ出てもらっても事務局体制としてやり易いとはならない。やはり何名かが核となって動くことになるので今後も十分に話し合いながら進めることとなろう。長年よく分かっている人とともに新人にもどんどん登場してもらいたいと思う。

 三月の劇団四季の「自由劇場」を借用しての春の演劇祭は、本年より全国高演協主催の第一回全国研究大会として各ブロック推薦の九校出場により実施できた。何よりも年度内に全国大会が可能となったことは大きな魅力であり、高文連との関係も深めて、定着発展を図りたい。

 夏の高総文祭のあと、優秀校東京公演に例年どおり審査員推薦の四校が参加となる。(昨年はささいなことで辞退校が出て残念であった。)その東京公演は本年第十八回を迎え予定どおりの実施が決まっているが課題も多い。まず予算の確保と運営面のサポート体制であるが、実施団体の公募というシステムにもなってきている。国立劇場関係者には毎年たいへんお世話になっており心より感謝を申しあげたい。

 著作権にかかわる問題は、高校演劇の公正な姿勢に影響する重要な課題であり、生徒への教育上からも常に襟を正して臨まねばならない。懸案事項のすみやかな改善と共にお互いに常に深く留意をいたしていきたいことである。

 韓国との交流は、昨年八月に青森中央高校がソウルで上演し、今年一月には韓国より東新女子高校が来日して東京世田谷のパブリックシアターでの東京私立高校の演劇祭に参加を見た。その間の事情は本会名誉会長の内木文英氏のご尽力によるものである。今後の交流の継続も課題の一つである。

 高演協としては加盟校のさらなる発展を目指し、活動情報の提供、顧問研修の充実、高文連との連携深化などに力を入れていきたい。

 最後に島根大会開催に当たられる皆様に深く感謝を申しあげたい。

永嶋 達夫

(全国高等学校演劇協議会会長)
(学校法人 十文字学園
十文字中・高等学校校長)


ようこそ 島根大会へ
悠久の地より吹く
 新 し い 風
 〜島根二〇〇七〜

第31回全国高校総合文化祭
第53回全国高等学校演劇大会

 ようこそ神々のふるさと島根の水の都松江にお越し下さいました。心から歓迎申し上げます。

 私たちの島根県は、演劇とはとても縁の深い土地柄であります。江戸時代初期に、歌舞伎踊りを始め、京都で爆発的な人気をとったという出雲の阿国は、島根県出雲市の出雲大社の巫女でした。晩年阿国はふるさとに帰り静かに余生を送りましたが、出雲市は今その墓所の付近に阿国座を建設して、歌舞伎踊りの伝統を蘇らせようとしています。

 また、大学教授の地位と名誉を投げ捨てて、松井須磨子と共に近代演劇の基礎固めに尽力した島村抱月は、島根県浜田市の出身です。抱月は砂鉄と木炭から鉄を吹く鑪師と呼ばれた人々の村で、極貧のなかで育った人でありました。抱月は、総合開会式での構成劇「贋作『日本の面影』〜Steel Wars〜」のモチーフの一つをなした鑪製鉄の経営形態を劇団経営に導入して、劇団の経営と演劇人の生活の安定と向上を図ったと言われております。

 なお、抱月の師の坪内逍遙が設立した文芸協会の大劇場主義に対して、実験劇場式の自由劇場を創設したのが小山内薫ですが、これを支援し指導した森鴎外が島根県津和野町の出身であることはよくご存じのことと思います。新劇運動黎明期の松井須磨子と、大正末期の築地小劇場で活躍する女優たちとをつなぐ役割を果たした伊沢蘭奢もまた、津和野町の老舗に生まれた女性でした。

 このように日本演劇史に大きな光彩を放った人々を排出した島根県の松江市で、第53回全国高校演劇大会と全国高等学校演劇指導者講習会を開催することが出来ましたのは特別に意義深いことと思っております。特に松江市は今年開府400年を迎えております。つまり、今年は堀尾氏が松江城を築き城下町松江を造り始めて400年になる記念すべき年でもあります。そうした時期に、この松江市に、高校演劇に情熱を注がれている高校生や顧問の先生方、あるいは高校演劇に熱い思いを寄せて下さるたくさんの皆様をお迎えしてこの大会を開催できますことを大変うれしく思いますとともに、心から感謝申し上げます。

 ただ島根県は小さな県です。高校の演劇部の数も少ないし、高校生そのものが多くの県とは比較にならぬほど少数です。従って、残念ながら昨年度の京都府大会のように、手厚くきめ細かな運営ができるかについては心細い限りです。ですが、出雲大社が縁結びの神の鎮まる社であることもご承知かと思います。全国からお集まりいただいた皆様が、この神々のふるさと島根の水の都松江での大会と講習会をご縁として、高校演劇に文字通り「悠久の地より吹く新しい風」を巻き起こして下さることを念じて歓迎のご挨拶とさせていただきます。

山根 正明

(第53回全国高等学校演劇大会
島根県実行委員会
演劇部会会長

島根県立松江農林高等学校長)

 

神有月のある  出雲の地へようこそ
 「神在月」がある島根へようこそ。出雲の阿国、島村抱月生誕の地島根へようこそ。

 島根で全国大会が開かれるらしいという話が出たのが平成9年頃。それ以来島根では少しずつ、着実に準備を重ねてきました。

 平成9年県総文祭開会式開始。平成10年の鳥取大会視察。平成15年の福井大会を皮切りに、青森大会、京都大会に生徒講評委員を連続派遣。その間、生徒講評委員に次年度開催県枠を設けることを全国高演協に提唱。

 平成11年、石見銀山近くの大田市で中国ブロック大会を開催したときは、舞台技術講習会と称し、郷土芸能部門、音楽部門の人も舞台運営に参加してもらい、人材育成を図りました。

 全国事務局との意思疎通も兼ね、平成15年から2年間、県大会の講師を全国事務局の森本先生に依頼。顧問研修会では島根の顧問団、行政担当者、会館スタッフとで楽しい一夜。平成16年には役割分担案、参加要領案を発表。運営要領も4割程度完成するという手際のよさ。

昨年のプレ大会を兼ねた中国ブロック大会では他県の先生方に舞台スタッフ、顧問研修会司会などを依頼。島根だけではなく、中国ブロック顧問の先生方の協力体制も整いました。17、18年度に中国ブロックの事務局長をさせていただいたこともあり、視察では得られない多くのことを知ることができました。

 全国大会の会場も当初の予定通り県民会館を確保。万全の体制で皆様をお迎えします。

 朗報も入って来ました。福井大会、京都大会に島根から代表校を出すことができました。特に昨年は島根県勢として初めて国立劇場の舞台に立つことができました。島根の顧問は大喜びです。

 「島根で全国大会を開くのは一過性のイベントのためではない。文化部の活性化、全国大会開催以降の文化部の飛躍の場にしなければならない。」行政に携わる人から聞いたこの言葉を、そうなればいいなぁと思いながら今日に至りました。あとは天候に恵まれ、多くの方に島根に来ていただくことを祈るのみ。

 ところが、現実は甘くはありません。島村抱月の出身地である県西部の石見地区で、今も演劇部があるのは3校のみ。県中部の出雲地区でも4校。島根で初めて全国大会に出場した学校にはもう演劇部はありません。中国ブロック大会常連校だった石見地区のある学校では、退職された元顧問に部室の整理が依頼されました。昨年度の中国ブロック大会に出場した津和野高校は今年4月に廃部が決まりました。総文祭開催までは文化部の廃部はしないでほしいという県実行委員会の要望は完全に無視されています。

 部員数は3分の1に減少。照明の第一人者は郷土芸能部門に引き抜かれ、舞台監督を頼まれもしないのにかってでる人、夜の部の実行委員長候補はともに県実行委員会スタッフとなる始末。

 演劇部でありながら他部門の強化指定にされた学校があります。また演劇部員が全員総合開会式に引き抜かれた学校もあります。

 予算は次々切り詰められ、最初は和やかだった実行委員会も開催年度が近づくとだんだんと険悪な空気に包まれてきます。

 第53回島根大会は、史上最小の加盟校で運営することになります。条件は最悪でしょう。でも、現実が厳しいが故に、部員、顧問は一層燃えています。条件が悪いからこそやりがいがあります。中国ブロック各県の顧問の皆様から、多くのOBから救いの手が差しのべられています。

 第53回島根大会を無事に終えるだけでは島根にとって成功とは言えません。近い将来、全国大会開催を契機に島根の演劇部は再生したと言えるようにしたいと思います。

細田 欣一

(第53回全国高等学校演劇大会
島根県実行委員会
演劇部会代表委員

島根県立松江農林高等学校)

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