第57回 福島大会/東日本大震災復興支援香川大会

大会審査結果
 第五十七回全国高等学校演劇大会は、香川県丸亀市綾歌総合文化会館アイレックスを会場として行われました。本大会は、福島大会・東日本大震災復興支援香川大会として行われ、代替開催地として急遽大会運営を引き受けられた香川県の高校演劇関係者はもちろん、近隣の四国・中国・九州ブロックから応援の高校演劇関係者が全面的に裏を固める大会となりました。また、被災と原発事故によって「復興《どころか「復旧《すらめどが立っていない福島県(橘会長)から、大会マスコットのペシュのTシャツで参加された生徒実行委員、顧問の先生方には、代表派遣にとどめなければならなかったつらい思いがあったにもかかわらず、開会式から、閉会式まで、心のこもった言葉で、「すばらしい全国大会《にしようという凛々しいメッセージを送り届けてくれました。

 何より忘れられないのは、初日の公演から最終公演まで会場は常に満席だったということです。この観客の熱気が、舞台にも届き、全ての舞台から高校生の「生きる《現実と「つながり《を切実に求める息づかいがあらわれてきました。このことを明快に指摘したのは、生徒講評委員の委員長白鳥みちるさんでしたが、今大会の審査員の先生方も同様のお気持ちでした。

 審査委員長の篠﨑光正先生と石井強司先生は、全国大会ではおなじみの先生。そして、女優の小川麻琴先生、評論家の九鬼葉子先生。顧問審査員は、前全国高演協事務局長の櫻井幹二先生、日下部光穂先生、山本恵三先生。大会期間中は上演後に必ず意見交換を行っていただき、審査会でも各校ごとにくわしくお一人ずつ、ご意見を出していただきました。観点の異なる意見が出ると、議論はさらに深まり、その結果、上演校の舞台の魅力がより鮮やかに浮かび上がることとなりました。

 そうした議論を重ねていきながら、最終日の審査会で、まず最初に行ったのが、優秀校四校の推薦投票でした。その結果は別表の通りです。

 この段階で審査員の過半数の支持を集めた三校を優秀校とすることはすぐに決まりました。議論はそこで、四校目となる優秀校の選考に移りました。

 票数には関わりなく、支持を集めた学校の舞台を再考し、その中で、大谷高校の作品「逝ったり生きたり《を優秀校とすることに議論を絞っていきました。そこで出された意見は、脚本の視点の新しさと共に、柔軟性があり、表現力豊かな二人の生徒のテンポのよい掛け合いが、舞台成果として高いレベルを示しているということで評価する声が続き、優秀校に推薦することになりました。

 こうして推薦された四校の優秀校からさらに最優秀校を選考するという段階になって、再度、各校の舞台に対する議論を行いました。

 津曲学園鹿児島高校の作品「窒息《は、地域性をよくあらわし、それが現代の高校生の閉塞状況を象徴するタイトルと合致する構成の良さは高く評価されましたが、舞台装置やラストの音響処理などに問題点が指摘され、「本音で語る《という主題に関わるところでの演技など、演出の課題を残すことになりました。

 北海道北見北斗高校の作品「ぺったんぺったん!《は関係を示す思いをナチュラルな演技で表現し、リアクションが自然に現れていること、地域の問題を等身大の視点で描いていること、優れた舞台美術など高い評価が続きました。それだけに、役割で演技が説明的に処理されてしまったアカリの演出が問題であると指摘されることになりました。

 山口県立華陵高校の作品「カツっ!《は、母を亡くしてがんばろうとする姉弟の関係とその心理を、祖母、DJ、部活の人間関係などで巧みに構成し、それらの場面をビジュアル的にも明確にさせる立体的な舞台装置で処理する演出、そして、楽器の演奏、歌唱力など、演技陣の総合的なうまさなどに高い評価が続き、最優秀とすることに意見が一致しました。

 部門賞の審査は、まず創作脚本賞から議論に入りました。推薦されたのは、北見北斗高校の「ぺったんぺったん!《、華陵高校の「カツっ!《、大谷高校の「逝ったり生きたり《でした。なかでも「逝ったり生きたり《は、生死の狭間で「生きる《ことを見つめるという視点の斬新さ、用いられている台詞の言語感覚の新しさ、二人で上演時間四十五分という過上足のない構成の巧みさなどが評価され、作者の東尾咲さんに、今年度の創作脚本賞を贈ることが決まりました。

 続いて、舞台美術賞の選考に入りました。推薦されたのは、華陵高校、北見北斗高校、そして埼玉県立秩父農工科学高校「少年神社《でした。神社を表現するには、もう少し「杜《の雰囲気を醸し出すような樹木があってもよかったのではないかとの意見もありましたが、祠、石段、鳥居、お神籤の一つ一つの丁寧な製作、衣装や小道具に至る統一感のある製作は非常に高い技術力であることが評価され、舞台美術賞を秩父農工科学高校に贈ることで一致しました。

 講評の時間は、例年の通りでしたが、けっして十分とは言えず、先生方には審査会での発言のごく一部しか行っていただくことができませんでした。出場校の皆さんとしてもその点は、心残りではなかったかと思います。本紙の各審査員の先生方の文をご覧いただきたく思います。

 最後になりましたが、今大会の特別な事情のため、いろいろと無理をお願いして失礼を重ねてしまいましたが、それでも生徒たちの舞台を熱心に、丁寧に見ていただき、講評いただいた先生方に心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。







【最優秀賞(文部科学大臣賞・全国高等学校演劇協議会会長賞)】

☆山口県立華陵高等学校

 フローレス・デラコリーナ作「カツっ!《

【優秀賞(文化庁長官賞・全国高等学校演劇協議会会長賞)】(上演順)

☆北海道北見北斗高等学校

 同校演劇部原案、

 梅村真奈・鳥羽啓太・新井繁作

 「ぺったんぺったん!《

☆大谷高等学校

 東尾 咲作

 「逝ったり生きたり《

☆津曲学園鹿児島高等学校

 谷崎淳子作

 「窒 息《

【優良賞(全国高等学校演劇協議会会長賞)】(上演順)

☆岩手女子高等学校

 川村明日香作

 「Colors《

☆埼玉県立秩父農工科学高等学校

 コイケユタカ作

 「少年神社《

☆清泉女学院高等学校

 高泉淳子・伊沢磨紀作

 「モンタージュ ~はじまりの記憶~《

☆群馬県立前橋南高等学校

 民間伝承より、原澤毅一脚色

 「荒野のMärchen(メルヒェン)《

☆愛知県立新城東高等学校

 畑澤聖悟作

 「親の顔が見たい《

☆愛知高等学校

 古典落語、同校演劇部脚色

 「紺屋高尾《

☆香川県立高松工芸高等学校

 川田正明+演劇部作

 「Stick Out《

☆福島県立大沼高等学校

 佐藤雅通作 「ひきなかへしそ

 ~悲哀白虎五人男(ひあいのしろとらごにんおとこ)~《

【創作脚本賞】

☆「逝ったり生きたり《の作者

 東尾 咲

【舞台美術賞】

☆埼玉県立秩父農工科学

     高等学校演劇部

以上

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