「演劇創造」 復刊第125号 平成25年(2013年)4月15日

平成24年度ブロック代表校決定

 第五十九回全国高等学校演劇大会(長崎大会)に出場される12校の皆さん、おめでとうございます。

 今年の大会には、一昨年の福島大会(東日本大震災復興支援香川大会)に出場した北見北斗高校、四年前の群馬大会に出場した都立東高校、そして18年ぶり二回目となる広島市立沼田高校が出場しますが、他は夏の全国大会初出場校ばかりです。

 なかでも、東北ブロック代表の宮城県名取北高校、九州ブロック代表の沖縄県立八重山高校は、いずれも一昨年に演劇同好会を発足させ、昨年、演劇部に昇格したばかりの新進気鋭の演劇部です。

 今年の長崎大会を「しおかぜ総文祭」と呼びますが、長崎のしおかぜに乗って、高校演劇の新しい風が、北から南から押し寄せてきているのです。

 先日、ある劇場プロデューサーの方とお話しする機会がありました。その方も高校演劇を長年ご覧になっているのですが、「最近の高校演劇はどうですか? 今も盛んですか?」と聞かれることになりました。その方は、たまたま常連の学校の舞台を見ることができなかったことを前提にお話しされていました。そこで私は、「ずっと以前から活発に活動している学校もたしかにあります。公立高校では、顧問の転勤があるので、それにともなう活動の浮沈がありますが、その結果、新たに活発な演劇部が登場して、新しい地域の牽引役となっている学校もあります。何より、高校生がつねに新しい作風をあちこちで求め続け、作り上げています」と答えました。
 会場は長崎市公会堂。伝統の大ホールを会場に、今年の全国大会は、まさしくそうした新しい風が吹き抜ける大会となることでしょう。

 この夏の高校演劇全国大会は、来年六十回を迎えます。戦後の余燼くすぶる混乱の中、平和と民主主義の新しい時代と文化にふさわしい高校生のための演劇を創造しようと、私達の大先輩が全国から駆けつけ、東京で大会を始めたのが最初でした。その頃を知る内木文英全国高演協名誉会長のお話を聞くにつけ、その当時の創造の気運、気概に心が躍ります。

 しかし、現実の動きに目をやると、その「新しい時代、文化」を消し去ってしまおうとする、穏やかならざる動きが気になって仕方ありません。私が勤務する大阪では、演劇は、「政治的活動」と一方的に見なされてしまうことが条例化されてしまいました。私は担当している現代社会の最後の授業で、「今日まで、〈戦後〉68年と語り続け、憲法と戦後の歴史を取り上げてきましたが、それは今日を〈戦前〉の初日とさせてはならないと考えているからです」と、告げました。

 私が若いときも、「新しい風」は必ず旧い壁とぶつかり、波風を立てていました。そこに息吹を感じました。そこに躍動を感じました。「新しい風」が吹いてこそ、新しい時代にくさびを打ち込んで始まった私達の全国大会はいつまでも、言葉の正しい意味で「次代を担う」高校生のための大会であり続けることでしょう。

 最後に、六年前の島根大会から全国高等学校演劇協議会の事務局長として、全国の先生方に多大なるご支援をいただきました。この六年で私はこの全国高演協の組織と伝統にどれほど助けていただいたことでしょう。短い言葉で大変恐縮ですが、心よりお礼を申し上げます。本当にお世話になりました。ありがとうございました。

                 (前事務局長 吉田美彦)
 

長崎大会出場校一覧
第59回全国高等学校演劇大会・第59回全国高等学校演劇指導者講習会
 第37回全国高等学校総合文化祭演劇部門

 期日:2013年(平成25年)8月2日(金)〜4日(日)

会場:長崎市公会堂 〒850-0874 長崎県長崎市魚の町4番30号

地 区
県  名
上演校
作  者  名
作  品  名
北海道
北海道
北見北斗高等学校 同校演劇部 新井繁 ちょっと小噺。(ちょこばな。)
東北
宮城県
名取北
高等学校
安保健 同校演劇部 好きにならずにはいられない
関東〈北〉
長野県
丸子修学館高等学校 フランツ・カフカ原作 羽場小百合+同校演劇部構成
関東〈北〉
栃木県
さくら清修高等学校 岩渕 誠
大島千怜
自転車道行曾根崎心中
関東(南)
東京都
東高等学校 三輪 忍 桶屋はどうなる
中部日本
三重県
高田高等学校 西尾 優 マスク
近畿
大阪府
鶴見商業高等学校 趙 清香 ROCK U!
中国
島根県
出雲高等学校 伊藤 靖之 ガッコの階段物語
中国
広島県
沼田高等学校 朽木祥原作『八月の光』(偕成社刊)より黒瀬貴之翻案構成 うしろのしょうめんだあれ
四国
徳島県
城ノ内高等学校 大窪 俊之 三歳からのアポトーシス
九州
沖縄県
八重山高等学校 宮古 千穂 0《ラブ》 
〜ここがわったーぬ愛島《あいらんど》〜
開催県
長崎県
瓊浦高等学校 劇団四季文芸部原作 たなか浩太郎潤色 南十字星

 

第59回全国高等学校演劇大会 入場申し込みについて
 第59回全国高等学校演劇大会(長崎大会)の観劇を希望される方は、往復葉書でお申し込みください。お申し込みいただいた方に、整理券を発行いたします。(観客座席数の関係上、整理券発行数には限りがありますのでご了承ください。)なお、この入場申込み手続きは、見込まれる大会観客者数をあらかじめ把握し、大会運営に支障が出ないよう準備するためのものでもあります。趣旨をご理解の上、ご協力くださいますようお願いいたします。

申し込みについて

 往復葉書に下記の要領で、ご記入の上郵送してください。

※『往信』用の裏面に以下の項目をご記入ください。

1.観劇希望日と観劇枠

  ……大会日程表を参考に観劇希望日と時間帯を記載してください。

(例……8月2日午前、8月3日午後)

2.講習会参加希望分科会

  ……講習会は演劇部顧問と生徒が対象です。一般の方はご参加いただけません。

  分科会名を第二希望までご記入ください。ご記入のない場合は、「参加希望なし」と扱います。

3.お名前

4.年齢と学年(生徒のみ)

5.郵便番号(自宅)

6.ご住所(自宅)

7.電話番号(自宅)

8.学校名/勤務先名……在籍する学校名もしくは勤務先名をご記入ください。

9.顧問/生徒/一般 の別

※『返信』用の表面には、お申し込み者ご本人の住所・郵便番号を正しくご記入ください。無記載の場合には返信いたしませんので、あらかじめご了承ください。

※『返信』用の裏面にはご案内文を記載しますので、白紙(何も記入しない)でお願いいたします。

※保護者・学校関係者等の入場も往復葉書での申し込みが必要です。

※往復葉書一枚につきお申し込み者一名です。

講習会について

 今大会は下記の講習会(分科会)を予定しております。講師等の都合により変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。その際は大会会期中の会場案内掲示をもってご連絡いたします。

− 分科会予定 −


第1分科会:創作ワークショップ

   (講師:平田オリザ氏)

第2分科会:演出ワークショップ

   (講師:篠ア 光正氏)

第3分科会:舞台美術

   (講師:松井 るみ氏)

第4分科会:最近の演劇状況

   (講師:今村 修氏)


第5分科会:部活動

   (講師:乳井 有史氏

      清野 和男氏

      高森 章氏)

第6分科会:

 生徒講評委員会合評会

※変更が生じた場合には、全国高演協ホームページに掲載いたします。


申し込み期限
※平成25年6月14日(金)
  〜 6月28日(金)必着
(申し込み期限後の到着は無効とさせていただきます)

お申し込み先
 お問い合せ先

〒852- 8157
長崎県長崎市泉町1125番地
長崎市立長崎商業
         高等学校内

全国大会観劇申込み事務局川端 晃代

※電話によるお問い合わせはご遠慮ください。
詳細は長崎しおかぜ総文祭
HPhttp://www.nagasaki-shiokaze.jp/
をご覧下さい。

申込記入見本
返信表面

《返信宛先》

往信裏面
往信表面

申込先

返信裏面
(返信先郵便番号)

 (お申し込み者

ご本人の)


住 所


氏   名

1.観劇希望日と観劇枠

 (時間帯/午前・午後)

2.講習会参加希望分科会

 (一般の方の参加は
  できません)

3.お名前

4.年齢と学年(生徒のみ)

5.郵便番号(自宅)

6.ご 住 所(自宅)

7.電話番号(自宅)

8.学校名/勤務先名

9.顧問/生徒/一般の別

852- 8157
長崎県長崎市泉町1125番地

長崎市立長崎商業高等学校内

 全国大会観劇申込み事務局

   川 端 晃 代  宛

白  紙

 

(何も記入しないでください)


第七回 春季全国高等学校演劇研究大会
(フェスティバル2013) 実施報告
 今大会の開催地である福島県は、地震だけではなく福島第一原発による大きな被害や影響を受けた地域です。過去に全国高演協では、台風のために丸一日上演ができなかった夏の大会(第50回徳島大会)においても、被災により福島県で開催できないため香川県に会場を移して行った夏の大会(第57回福島大会復興支援香川大会)においても、被災直後の春の大会の実施について検討した際にも、「上演を目指して懸命に汗を流してきた生徒たちの発表の場を閉ざしてはならない。」ということを基本姿勢としてきました。昨年度第六回大会は、特に被害が大きかった宮城県仙台市の広瀬文化センターを会場に予定していましたが、会場の被害は大きなものでした。しかし、「全国から高校生が集まる大会を実施するために、被災した会場を最優先に補修しよう。」という仙台市のみな様の熱い思いと宮城県の先生方生徒さんのお力により、全国すべてのブロックの参加によるすばらしい大会を実施することができました。

 今大会開催にあたっても様々な危惧がありました。「原発の問題がある限り、まだ復興は始まっていない。」という心に響く言葉を述べられた福島県の先生もいらっしゃいました。2011年8月に福島県福島市で開催を予定していた「第57回全国高等学校演劇大会・全国高等学校演劇指導者講習会」を香川県丸亀市に会場を移して行わなければならないという苦渋の決断によって夏の大会を実施した経緯もあり、全国の高校生がこの地に集まり自分たちの思いを表現すること、被災された地域に足を運び実感することにはとても大きな意味がありました。第57回大会実施のために長年準備に努めて来られた先生方とともに、福島県で今回の全国大会が実施できたことは、全国高演協の仲間たちにとっても大きな喜びでした。開会式では、地元磐城高校合唱部と教員による演奏をバックに、被災地の模様がスライドで上映され、参加したすべての人々の心に大きな記憶が残されました。上演された作品の多くが、3・11以降をどのように生きるべきか等、何らかの形で震災からの影響を感じさせるものであり、特に地元大沼高校の作品では、被災した高校生の想いが反映されていて、深い感慨を与えました。

 大会運営においては、まだまだ厳しい状況が続く中で、いわき市並びに会場であるいわき芸術文化交流館アリオスのみなさまの協力のもと、開催県である福島県を始め、岩手県・宮城県・香川県・島根県等多くの県の先生方に参加していただき、とても気持ちの良い大会運営をおこなうことができました。
 来年度は、岩手県北上市での開催を予定して準備を進めております。今大会に熱い思いでお力添えいただいたすべてのみな様に深く感謝するとともに、今後もこの大会がさらに充実したものになるよう協議会一同努力を続けてまいりたいと思います。 

 (副事務局長 森本 繁樹

2013年(平成25年)3月22日(金)〜3月24日(日) 於:いわき芸術文化交流館
地 区
県名
上 演 校
作  品  名
作 者 名
中部日本 愛知 東海学園
高等学校
田舎一人芝居 近藤 輝一 作
関東(南 山梨 甲陵
高等学校
待ちの風景 山崎 公博 作
九州 佐賀 佐賀東
高等学校
錆びた真実と、邂逅に抱かれて。 いやどみ☆こーせい
同校演劇部作
関東(北) 群馬 新島学園
高等学校
厄介な紙切れ
−バルカン・シンドローム−
大嶋 昭彦 作
中国 島根 松江工業
高等学校
贋作マクベス 中屋敷法仁
東北 青森 青森中央
高等学校
はしれ!走れメロス 「走れメロス」太宰治作、
「新・走れメロス」(第29 回全国高校
総合文化祭総合開会式シナリオ
検討委員会作)より一部引用
畑澤聖悟 作
四国 徳島 富岡東
高等学校
羽ノ浦校
避難 川瀬 太郎原案
村端 賢志作
北海道 北海道 登別明日
中等教育学校
コイカツ! 橋本 若菜 作
近畿 大阪 精華
高等学校
駱駝の溜息 山口 大樹
黒崎 裕基 作
開催地 福島 大沼
高等学校
シュレーディンガーの猫
〜 Our Last Question 〜
佐藤 雅通
同校演劇部作

第八回 春季 全国高等学校演劇研究大会予定

2014年(平成26年) 3月28日(金)〜30日(日)

於:北上市交流文化センター さくらホール


 

事務局通信
師走の木枯らしが吹く中、下町情緒あふれる浅草で第三回常任理事会が行われました。

 まず、全国(富山)大会の総括が開催地からなされました。大会は多くの方のご来場をいただき、成功のうちに終わりました。

 ただ、課題点として、同一会場で別の部門が行われることによる運営調整の難しさが指摘されました。富山大会では、展示スペースなどの関係から美術工芸部門が一階フロアを中心に展示発表が行われていました。同じ高校生の作品を鑑賞しあうという点ではメリットも大きいかと思いますが、観客誘導など運営面での条件整備が必要なため、今後同様のケースが発生した場合、対応を迫られることになります。

 また、出場校の生徒が、「出場校」の枠で入場するケースと「はがき」の枠で入場するケースが混在し、入場実態の把握が難しかったことが指摘されました。

 さらに、今大会に限ったことではありませんが、多くの方が入場されるため、開催地の生徒が結果的にほとんど大会作品を観ることができないということも生じました。大会運営に多くの生徒委員が関わっており、係分担を融通することである程度の観劇機会は保障されますが、やはり全国大会は研究大会の側面も持っており、開催地の演劇活動の活性化に寄与する要素もあります。可能な限り、開催地の生徒が作品に触れることができるように工夫を重ねていきたいものです。

 八月の理事会で確認が求められた「コーチ」の大会への関わり方については、二〇〇四年度の理事会での議事の確認をしました。解釈について差が生じないように、新年度の理事会で再度確認します。ただ、異動した顧問の扱いについて、コーチと別枠に考えてもよいのではないかという意見もあり、理事会で協議したいと考えます。
 第五九回全国(長崎)大会については、大会日程、会場など変更点を含めた確認が行われました。会場周辺のスペースが厳しいため、道具類の保管場所、大会運営スペースの確保など、苦労がしのばれますが、何とか事故のないように運営して生きたいと考えます。
       *
 全国高演協の役割の一つである調査研究の一環として、協議の上、富山大会の場で正式にスタートした「演劇教育の実態をつかむアンケート」について、年明け一月からインターネットを通じて行われました。三月上旬の段階で、定の数が集まりつつありますが、周知の方法、タイミングの関係からまだ十分な数とは言えません。演劇活動に係る全国規模のアンケートとしては、あまり例のないものです。

 アンケート結果から、部活動を通じて、生徒が、どのような変化を遂げていくことができたのかを分析します。またそこから、表現活動としての演劇が個人の行動、心理にどのような変化を与えることができるのか、また対人関係(コミュニケーション能力)にどういう影響を及ぼすのか、などについても考察していきます。

 近年、人間関係の形成について教育現場で大きな課題の一つとなっています。その中で、自者と他者への認識、自己肯定感の体得などに表現活動、特に演劇の果たす役割は大きいものがあります。今回のアンケートは単発のものではありません。時系列変化や、経年比較を通じて、データの蓄積を図り、有為なものにしていきたいと考えています。
 よりよいかたちにするために、皆さんからご意見をいただきながら、調査研究を進めていきます。ご協力をお願いいたします。

       *
 「内木賞」については、四月の理事会に原案をお諮りし、可能であれば長崎大会から授与する方向で調整します。
 今年度の春季大会については、今年度三月に福島県いわき市の「いわき芸術文化交流館アリオス」で開催されます。七回目を数え、発表も運営も軌道に乗ってきています。地元福島県をはじめ、会館スタッフ、東北ブロックを中心に多くの方の協力の下、すばらしい舞台になることを期待しています。

 四月の長崎では、新しい顔ぶれになるブロック、都道府県もあるかと思いますが、今後ともよろしくお願いいたします。


                     (事務局・三上 実)

↑上へ