平成26年度、いよいよ茨城で全国大会が開催されます。宮崎大会から視察の人数を増やし、各全国大会から多くを学ばせていただいています。開催県の先生方に御礼申し上げます。
思えば四年前、私は一顧問として茨城開催のニュースを知ったのでした。「間近で全国大会を見られるなんて!」と興奮したのを覚えています。それまで、県大会・関東大会で舞台係の手伝いをやっていた私は、各校の舞台裏を見てみたくて、「何でもやりますよ!」と前事務局長につい言ってしまいました。前事務局長は「あ、言っちゃったね」という表情を笑顔のうちに浮かべていたのでした。そしてあれよあれよという間に事務局長と全国大会運営委員長の仕事が回ってきました。「ああ、あの一言がいけなかったのか」と悔やんだときは後の祭りです。後のことを考えずに引き受けてしまい、後になってその為し難きことに気づいて悩む、というのは森鴎外『舞姫』の主人公、太田豊太郎の姿。超エリートの豊太郎に自分を重ねることはできませんが、その仕事の大きさには途方に暮れてしまったのでした。
しかし、茨城県は50校あまりの加盟校があり、地区大会もそれぞれの学校が趣向を凝らして上演しています。熱心な顧問も多く、事務局の先生方も様々なアイディアを出し、支え合いながら高校演劇を盛り上げています。(一応)関東圏ということもあり、東京や埼玉等にも出やすく、プロの演劇を鑑賞したり、ワークショップへの参加も気軽に行うことができます。この地の利、人の利を活かして全国大会運営に臨みたいと思っています。
全国大会を開催するにあたって、一番の問題は全国大会経験者が少ないということ。茨城は26年間の高校演劇連盟の歴史の中で、夏の全国大会に出場したのは平成17年『トシドンの放課後』を上演した友部高校のみ。ブロック大会の優秀賞までは何度か手が届いているのですが、その先へ進むことができません。これでは、開催県枠で出場する学校のレベルがまず心配されます。そして、大会運営の面でも大きな不安材料となっています。
茨城県のレベルを上げるためには、まず地区大会のレベルを上げていかなければなりません。春の研修会(半日)、夏の研修会(1泊2日)を通して生徒顧問共に芝居の作り方を学んでいます。また、一昨年から「新人大会」と銘打って、15分劇の上演を行っています。この試みには、発表の機会を増やし、役者のレベルを上げていきたいという狙いがあります。そして、夏の地区大会、秋の県大会を迎えます。地区大会では、これまでは県の顧問内で審査・講評を行っていましたが、外部の演劇関係者をお呼びして、より充実した講評をいただくようにしました。全上演終了後、ワークショップを行っていただき、後の作劇に生かせる工夫をしています。講評についても、各顧問が実りのある講評ができないものかと考え、昨年、青年団演出部の林成彦氏を講師にお迎えして、顧問対象の「講評ワークショップ」を開きました。これは、「講評とはこうあるべき」という一方向に導くものではなく、講評に向かう心構えや、問題点・注意点について顧問全体でシェアするといった類のものでした。各顧問の演劇間の違いも垣間見られ、また高校演劇への愛情・思い入れも見られ、顧問間でのコミュニケーション・ワークショップといった趣きもありました。プロの演劇人ではない顧問の講評について、じっくり考える契機になりました。
茨城の演劇レベルの向上には、まだまだ時間がかかりそうですが、様々な取り組みが徐々に効を奏してくるのではないかと思います。全国大会運営についても、顧問全体で運営委員会を開き、勉強をしていっています。わからないことだらけで何から手をつけてよいのかわからない授業についていけなくなった生徒のようでしたが、こちらも先催県から多くを学び、徐々に進んできています。
茨城県は、海もあり、山もあり、空港もあり(神戸便と札幌便しか飛んでいませんが)、首都圏(一応)でもあり、ということで、全国大会にいらっしゃる皆様に喜んでいただける要素は数多くあります。なんとか県内顧問生徒一丸となって全国大会を成功に導いていければ、と思います。これからもご支援ご協力、よろしくお願いします!
(茨城県高等学校演劇連盟 事務局長)
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『演劇創造』への原稿依頼を受け、十二支が一周するだけの演劇部顧問生活の私は、「京都の演劇活動の歴史を語れる経験はないし、どうしよう」と、京都の事務局で相談したところ、京都の小さな試みをご報告することになりました。
近年、京都府高等学校演劇連盟には、三十数校の高校が加盟しています。部員数が一桁という学校も過半数あり、「来年、加盟できるかわからへん」という顧問の嘆きも耳にしますが、春の校内公演、夏の地区大会、秋の京都府大会・近畿大会、冬の合同公演など、一年を通して、熱心に創造活動と向き合っています。また、公演以外でも、講習会や公演時の生徒合評会を通じて、学校をこえた交流を深めています。
さて、せっかく心をこめて創った舞台。ぜひ、大勢の人に観ていただきたい!そう思うのは当然で、どの都道府県でも様々な形で公演の広報にお努めのことと思います。京都府では、その情宣のひとつとして、二〇〇九年度より、「京都府高等学校演劇連盟公式ブログ」で情報を発信するようになりました。公演日程や演目の案内の他、上演校からの作品アピールなどのコメントや、創作脚本の内容、各校のクラブ紹介なども掲載しています。
このブログは、二〇〇六年に、京都が全国大会の開催地となった折、生徒講評文を会場に来られない方にもお届けできるよう、講評文の掲載を目的に始めたものでした。その当時、京都府の事務局員だった私は、ブログ管理を担当することになりましたが、そういった媒体での情報発信の知識も経験もなく、「ブログってどうやって始めるの?」という疑問からのスタートでした。全国大会を何とか乗り切った後、しばらく閉鎖していた連盟のブログですが、これまで紙媒体で長年発行していた「ENGEKIDS(えんげきっず)」という京都府の連盟内の交流紙の機能をブログに移行する形で、運営を再開することになりました。情報を「随時」「迅速に」発信できることの魅力を重んじての移行でした。
都道府県やブロックの演劇協議会でウェブサイトを運営され、多彩な情報を発信されている場合と比べると、京都府はこじんまりとした規模になります。けれども、更新の手順が平易なブログは、誰でも大きな負担を感じず担当できることが何よりの利点でした。七名の顧問で構成している京都府の事務局内で、その年度のブログ管理者を決めるのですが、毎年管理者が変わってもスムーズに引き継げています。更新の容易さは、頻繁に情報を公開できることにもつながっているかと思います。実際、どれほど情宣の効果があるのかは数値等で出てくるものではありませんが、何年も前に卒業し演劇から離れていた卒業生が、偶然このブログを目にし、公演のことを知って観に来てくれた、という嬉しいこともありました。
また、ブログには、創作脚本についての情報も載せています。京都府で「創作脚本コンクール」を始めて、今年で二十四年目になりました。毎年、各校の顧問・生徒による創作脚本が応募され、京都府の三支部から選ばれた劇作委員の顧問が審議し、優秀脚本を決定する、というコンクールです。上演実績を問うていませんので、大会等で上演には至らなかった脚本や、校内公演のために創られた脚本も応募することができます。そうして、このコンクールでの最優秀作品を、近畿高等学校演劇協議会の劇作連絡会で行われます、優秀作品脚本選考会へ推薦しています。さらに、創作脚本コンクールの受賞作品は、『創作脚本集』として、冊子の形で刊行しています。五年前に第二号を発行し、一九九八年度から二〇〇七年度のコンクールで受賞した十四作品を収めました。
今や、あらゆるところで容易に情報を入手でき、脚本もウェブサイトで公開された数々のものをすぐ見ることができますが、それは同時に、見る側の目の確かさも、ますます試されている状況なのだと思います。様々な舞台や脚本に触れる機会を得て、それを良い肥やしとして見る目を育て、生徒が自分たちの創造活動に生かしていってくれること。その環境作りに、連盟として顧問として、ささやかながら助けになれたら、という気持ちで、ウェブでの情報発信や創作脚本集の刊行に取り組んできました。二年後には、隣の滋賀県で全国大会が開催されます。京都大会以来の近畿地区での開催です。京都大会の時に支えていただいた分、少しでもお返しができるよう、京都での活動も盛んにしていきたいと思います。ゆっくりの歩みですが、一歩ずつ、着実に。
「次のお休み、何しよう。あ、このブログによると、ちょうど京都で高校生が芝居するらしいね。そうだ!京都の演劇、行こう」
という方がいらっしゃればいいなぁ…。
その折は、どうぞ『創作脚本集』もお手に取ってみてくださいませ。
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