■ 分 科 会 | |
第一分科会
伝えたいことは伝わらない 講師 平田オリザ |
第二分科会
感情移入を考える 講師 篠ア 光正 |
第一分科会は、前半が長崎県内の演劇部員十八名が参加したワークショップ(他の約二百名の参加者は客席で見学)。後半が主に劇作についての講義という形で行われた。 ワークショップ(1)出された質問に対し同じ答の人を見つけ集まるという小学生用のワークショップ。クラス開きのHRなどで使われている。 ワークショップ(2)自分と近い趣味の人を見つけ三分以内にペアを作るという役者向けのワークショップ。数字の書かれたカードを用いて行われた。ルールは、「カードの番号の多い人は活発な趣味を持ち、少ない人はおとなしい趣味を持つ」「全員初対面、番号以外は何を話しても良い」「五人以上で集まらない」「一度ペアができたら変更できない」等である。 このワークショップに於いては「趣味は何ですか?」といった表面的な情報の収集だけでは十分ではなく、どんなつもりでその言葉(この場合は趣味)が使われているかまで理解し合う必要があった。 演劇とは、このように言葉に対して様々なイメージを持つ人たちが集まって創るものであり、これが演劇の面白さであると共に難しさでもある。 ワークショップ(3)二人でキャッチボールをし、本物のボールを使った場合と、使わない場合の違いを発表し合う。客席からも指摘させる。 一般にボール無しの場合、上半身だけの大げさな動きになる。演技者はまず身体の動きに意識的になることが求められ、自分や他人をよく観察することが大切だ。 また、感想の中で多く出た「思ったより・・云々」と言う言葉は、お互いがイメージを共有していなかったことを表している。舞台上で演技者がきちんとイメージを共有できていれば、それは客席に伝わる。 ワークショップ(4) 長縄(縄はない)跳び。回っている縄に順に入り、全員が入ったら順に出て行く。 ワークショップ(3)と比べ、イメージを共有しやすい例として行われた。客席にも無いはずの縄が見えている。「無いものが見える」というのは演劇を支えている原理だ。 こうした表現が可能になるには、「物理的要件」と「精神的要件」の両方が必要である。長縄跳びは縄の動きも大きく、リズムがある。また「当たると痛い」「失敗すると恥ずかしい」といった緊 張感が演じる者にもあり、「物理的」「精神的」要件が揃った例である。 しかし一方で「イメージを共有しやすいもの」とは、単調で退屈なものでもある。客はイメージの共有がしにくいものを見たいのであり、一番共有しにくいのは「人の心の中」である。また、芸術の世界で「中身がある」とは「オリジナリティがある」と言うことで、「中身のあるもの」は「伝わりにくい(共有しにくい)もの」であるとも言える。 しかしながら舞台と客席でイメージの共有ができない状態で、いきなり強い主張がされる場合、大概の客は引いてしまう。劇作の場に於いても伝えたいことを先に書きがちだが、共有できるまで我慢することが大事であり、演出も、まず共有し易いものから入って、しにくいものにたどり着くようにすべきである。「伝えたいことは伝わりにくい」事を知って、ではどうすれば伝わるかを考えていくことが大切だ。 ワークショップ(5) どうすればイメージが伝わるかを考えてバレーボールを投げ合う。 役者は(3)で学んだように自分の身体を観察し鍛えて、思うような表現ができるようになることが大切だが、それだけでは足りない。他者とアイデアを出し合い、トライ&エラーを繰り返す中で互いにイメージを共有していくことが必要となる。 講義「劇の創り方」 映画や漫画のようなプロットを細分化するやり方ではうまい芝居にならない。見せたいプロットを絞り、その間は客に想像させる。そして、1/3か1/4までに、ここがどこか、誰がどんな運命を抱えているか分かるようにする。 結末をどうするかに悩む人が多いが、良い芝居とは結末を知っていても見に来させるものだ。芝居とは、結末に向けて右往左往する人間の様を見せるものである。 「場所の設定」に関しては、プライベートな場所は向かない。例えば家の中では、父親の仕事を全員が知っており、話題になりにくく、客にとって重要な情報が出にくい。パブリックな場も、他人通しの集まりの中では会話をしないので適さない。有効な場は「セミ・パブリックな空間」で、中に中心になる集団がいて、出入りが自由な場所である。 次に「背景(抱えている事情)」を伝える際は、なるべく当人には語らせない。外部者を登場させることで事情を伝える。 「運命」の設定については、「集団が」運命を抱えるようにする。その際意見が分かれるような程度の運命にする。(圧倒的な運命の中では意見が分かれにくい) 「登場人物」についてはキャラクターだけでなく、その人物の「ファンクション(機能・役割)」をきちんと考える。そのためにも人物を「内部」「(中間部)」「外部」に分けて設定し、それぞれが持っている情報に差を付けると良い。なぜなら人間はお互いが知っていることは喋らないし、お互いが知らないことは話題とならないからだ。外部の人の役割として考えるのは「問題をもたらす人」「問題を膨らます人」「問題を解決する人」の三点である。 ここまでが劇作りの下準備である。次にプロットをどう作るかだが、まず客にどんな情報を伝えるかを考え、人の出入りを決めていく。情報を伝える際は情報から遠いエピソードで伝えると良い。(例えば「静かだね」「ゴッホって水虫だったらしいよ」といったエピソードでここが美術館であることを伝える。) 「笑い」とは「社会的なもの」に「人間的なもの(その人にとって大切なもの)」が突入する時、真面目な関係の中に人間的なものが入って足下をすくわれる時に起こる。故に構造をきちんと作ることが大切となる。 演じる者、演出する者、創作劇に挑む者、それぞれに対して、大変わかりやすく、具体的で適切なアドバイスを頂くことができた。時間切れで、質疑応答がカットとなったが、詳しくは先生の「演劇入門」を是非読んで頂きたい。 (文責 長崎商業高等学校 川端光代) |
演出で大切なこと
(文責 長崎総合科学大学附属高等学校 |
第三分科会
舞台美術について 講師 松井 るみ |
第四分科会
演劇記者って何? 講師 今村 修 |
長崎市民会館文化ホールの舞台ステージで松井るみ先生をお迎えしての講演会が行われました。大学の学生に講義される時のように、パワーポイントを使用して、先生が自ら作られたミュージカル・ストレートプレイ・オペラそしてコンサート等で設置された数々の舞台美術が映像によって紹介されました。このような舞台美術がどのような仕掛けになっているのか、どのような材料で、どのようにして作られるのかを説明してくださいました。 (文責 九州文化学園高等学校 |
〈アングラ演劇の登場〉 (文責 佐世保東翔高等学校 |
第五分科会
部活動での悩み 部活動での悩み講師 乳井 有史 清野 和男 高森 章 |
第六分科会
生徒講評委員会合評会 合評会報告と生徒講評委員会の魅力について
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部活動のあり方について、講師の先生方がこれまでの関わり方をお話しされながら、参加した生徒たちとの質疑応答がなされた。
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生徒講評委員会は、同じ高校生の視点から高校生の上演する劇を真摯に受け止めることを目的としている。仲間たちと共に観劇し、劇を観終ってから討議し、劇に対する受け止め方や感じ方が違うことに気づくこともある。ディスカッションという深まりを持たせることで、自分自身の気づきはさらに大きくなる。この気づきは学びにも繋がっていく。それこそが生徒講評委員会の存在理由だと今回担当して強く感じた。
(文責 瓊浦高等学校 |