タイトル   復刊第90号(静岡大会特集号)Web版

13.第四分科会
いい部活を   つくるには

    講師 森 一生  山本 恵三

 まず申し上げたいことは、「伝わってこそ言葉だ」ということです。舞台でテーマを語っても、一人一人の心に落ちなければ伝わったといえない。行動で表す、目に見える形にする。そして観客の想像力や感性に訴え納得してもらうことが大切です。
 感情やテーマを表すのに、コロスというのは便利だと思います。主人公にからみ、主人公に問い返す。すると、やりとりの中で主人公の心が現れてくる。やりとり、問い返しは部活動自体の中でも大切です。高校演劇だから中年男性は出せない、どうするか、と問答する。その中で工夫が生まれる。弱みを逆手にとることが大事です。
 劇の言葉には人間性が現れます。自分達の感性も大切にしたい。本を飽きるまで読む。部員全員で同じ本を読み、意見を交換しあう。また演劇とは人間雑学、人間関係雑学です。それを学ぶのも部活です。何気ない時の人のあり方。人ってどういう時にどんな反応をするのか。そんな日常の観察や心配りの積み重ねからいい劇ができる場合も多いのです。大事件が劇とは限りません。
山本  全国大会はすべてが面 白いですね。また全国大会に来れない作品でも素晴らしい物はたくさんある。 いろいろ見てそう感じます。見る人にわかりやすいことも大切だと思います。まずそう言いたいです。  さて、私の部活が全国大会でがんばれたまでを紹介します。
 最初は地区大会の努力賞でした。その後、まず形から入りました。Tシャツを作ったんですね。雰囲気からもりあげて、「勝つことだけを考えよう」と言いました。
 多くの舞台を見て、メモをとり、批評をよく聞くことを徹底しました。その中で、自主的に舞台を作る気持ち、勢いが出てきました。やらされているのと、自分でやろうでは随分違います。芝居が生き生きとしてくるんですね、自分達で作り上げると。生徒が役に、劇に命を吹き込むんです。
 勢いは大切です。何年かの中で、地区大会、県大会を勝ち、四国大会で最優秀賞になり、やっと全国大会に進めました。「銀河鉄道の夜」。きびしい批評をいただきましたが。
 自分にわからないことはやらない。難しく考えず、簡単なことからやっていく。既成の台本の場合も、作者の作った物を演じるのではなく、自分達で作りなおしていくのがいいと思います。あいまいなことをうまく表現できるまで消化し、練習することが大切ですね。
 部員をみんな舞台に出したい、自分たちのテーマを伝えたい。そういう気持ちから創作脚本がほとんどです。創りながらテーマへの答を見つけていきます。
 「奇跡の人」の稽古の時、部員から「そんなに怒るのならやめる。楽しくない。自分でやってない」と言われました。同じ時、HRでも生活問題をかかえていて、その時の無力感の話をその部員にしたんです。サリバン先生が嵐のように荒れるヘレンに対して何もできなかった時と重ねて。すると部員は「それならやる」と言いました。台本の中に自分なりの意味を見いだしたと思います。
 自分たちの活動を大切にして下さい。