復刊94号  WEB版


都道府県だより


岩手この6年…いや、私的 この6年… 岡 部  敦


 前回この演劇創造に岩手の話題を載せたのは6年前のことだ。東北大会を終えた感想を書いた記憶がある。それから6年。今年岩手県で東北ブロック大会がある。会場は一関市である。6年前、大会事務局長を仰せつかったとき、若干二九歳の私のしたことは、各県大会を観劇にまわった。そして、顧問研修会にもズケズケと顔を出し、各県の熱気に 「岩手もやらねば〜」 と感じたものだ。
 それから6年。私は何をしてきたのだろうか?と考える。
 脚本はとりあえず3本書いた。東北ブロック大会には2回出場した。全国大会は毎回観てきた。学校が変わった(岩手の公立高校の異動は6年基準と言って早い。部の形が出来た頃には異動になってしまう)。そうだ、去年から岩手県高校演劇協議会の事務局長になった(締切りを守らない事務局長で、多方面 に色々迷惑をかけているようだ)…。
 岩手は全国大会に東北ブロックの代表として出場したことがない。福岡大会が第四七回で、平成一三年一二月に実施された東北ブロック大会が第三四回。岩手が東北大会に参加するようになって三〇年弱。全国大会が岩手で開催され、会催権枠で出場した1回が、岩手の全国大会出場の記録だ。岩手にとって全国体会出場は悲願なのだ。
 しかし、この6年で色々経験する中で、やんちゃな勝気だけの自分から、色々なものが見えるようになってきた。それは疑問にもなっている。
 「東北ブロックを勝ち抜いて全国大会に出場したい!」と思うことは不自然なことではないだろうか?コンクール主義に陥っているのではないか?コンクールに勝つことを目的としていないだろうか?
 が、しかし、毎年夏の高総文祭の新聞記事には「演劇を除く二〇専門部が全国大会に出場…」と載る。これは、結構効く。気にしなきゃいいのは分かっているが、管理職が追い打ちをかけたりする。「演劇は全国大会行けないのか」と。「そりゃ、県の代表がそのまま全国大会に出場したり、輪番でフェスティバルとして出場する他専門部といっしょにされてもな〜」とも思うが、一般 的にはそういう認識は無い。
 今は…というと、良く分からない。ただ、今年の東北大会がとても楽しみだ。どんな作品が出てくるのか?会場を気にいってくれるだろうか?運営をどうみてくれるのだろうか?観客はいっぱい入るだろうか?今年から週休2日だ。いっぱい入ってくれないかな〜。昨年の多賀城での東北ブロック大会では北海道からも観にきてくれた演劇部顧問の人たちがいた。今年も来てくれるのだろうか?
 6年前の東北大会では、舞台監督から事務局長から広告集めから何でもかんでも一人で背負おうとしている自分がいた。結局はたくさんの方に助けられていたことに今は気づく。
 今年は最初から、多くの仲間とブロック大会を運営しようと思っている。一人では決して出来ない。でも、私には多くの仲間がいる。高校演劇を通 じて知り合うことができた仲間がいる。いや、これから知り合う仲間とも一緒に作っていける。これが、演劇の良いところだと感じるのである。 (第35回東北地区高等学校 演劇発表会大会事務局長)


チバの「ヒ・ミ・ツ」   田井中 善夫

部員A 千葉県の高校演劇って、イケテますよね〜。全国大会へも、だいたい毎年出てるし……。
ニシカワ そりゃ、気合いが違うもん。加盟校数が一五二で、県内高校の七割が演劇部持ってることになるからね。
部員A うっ、なんて説明的なセリフ。そーゆーセリフを書いちゃいけないって、ブロックのワークショップの時習いましたぁ。
ニシカワ そう、加盟校は、十二のブロックに分かれて、それぞれ大会などの地区活動をしてるわけね。でもって、うちみたいにブロックでワークショップしたり、い ろいろと独自の活動してると。
部員A 県全体の合宿もあるんですよね。
ニシカワ 夏の研修会ね。ナツヤスミを利用して、生徒・顧問が一緒にプロの指導を受けるシステムになってます。
部員A 先着順なんですぅ。私、去年、行けなかったんですぅ。「流山」にぃ。
ニシカワ 千葉県には、流山青年の家という県立施設があって、これが演劇設備をもっておるんですなぁ。ふぉっふぉっ。これも、千葉県の自慢です。
部員A 「シードブロック制」も、ご自慢じゃないですかぁ。
ニシカワ おっと、いいご指摘。ブロックは12で、県大会に参加するのは、14校。このプラス2は、前回の県大会で上位 だった学校の属するブロック二つがもらうというシステムですな。これでブロック全体のレベルアップを図る……。
部員A ブロック内での足の引っ張り合いを避けるという説も……。
ニシカワ そういうことは、他県にばらさなくてもよろしい。  あと、県レベルでは、顧問対象の照明講習会ってのも始めましたぁ。あと、二月には顧問のみんなで東京へ観劇に行きますぅ。
部員A せんせー、千葉県の高校演劇の歴史を教えて下さい。
ニシカワ おっ、君こそ、かつて一世を風靡した日ペンの美子ちゃんみたいな、都合のいいセリフっ。 昭23 県高校演劇コンクール開始 昭25 県高校演連盟発足 昭38 県高教研演劇部会発足  あとは、『千葉県高校演劇五十年史』読んでね。各県に配ったからね。あ、ほしい人は、創立以来の地区大会全上演リスト付きで定価二五〇〇円、私まで電話してくださーい。どぞ、よろしく。
部員A そのギャグ、高校生には通じませんよ。
ニシカワ うるさい。不易流行といってだな、よいものは時代を超えてよいのだ。去年の県大会にも、千葉県では三島の近代能楽集が出場しておる。そーゆー広い鑑賞眼こそ、千葉県の売りなのだ。がちょーん。
部員A 千葉県には、「コモンセンスの会」という顧問劇団があって、毎年、めちゃ面 白い演劇を上演してくれるんです。もちろん、古いギャクなんか使いませんので、ご安心を。でも、実は、千葉って、他には言えない秘密があるんですよねー。
ニシカワ えっ、えっ、そんなんあったっけ?
部員A 顧問が事務局長やっちゃうと、県大会を抜けて関東まで行けない。もうかれこれ二十年以上、そういうジンクスがあるのデス。
ニシカワ ……そりゃ、いろいろ、あってだね。結構、わしって忙しいのよ。
部員A 賞状の宛名書いたり、カップ磨いたりとか……。
ニシカワ そ、この間なんか、カップの柄が壊れてたのよなー。それをどっかの学校が、リボンで隠してたのよなー。……なんて、そーゆーことも、他県にばらさなくてよろしいっ。
部員A せんせー、「事務方」って、つらいっスねー。にやにや。
ニシカワ こんな千葉ですけど、顧問と生徒の仲だけはダントツです。末永く、よろしくぅ。 (千葉県高文連演劇専門事務局次長)

 

大分  昨日・今日・明日   飯田 昭一

 最近、インターネットのおかげで、各地の情報のやり取りが多くなりました。
 たとえば、北海道のある掲示板を覗けば、地区大会から全道大会までにどんな作品がどんな風に上演され、どういう評価を受けたのかまでわかります。それやあれやについて掲示板に書き込みをしているうちに、顔のないあえかな接点で脚本がメールで送られ、意見を求められたり、それによってさらに近しくなっていく、とかいう風に。また、田舎町には大きな書店がないので脚本類が手に入りにくい。それは時に各学校の演劇部から悲鳴のように聞こえてきます。各新聞の書評や広告には入念に目を通 すのだけれど限界があります。しかし、たとえば書店ネットのe-honを開いて戯曲を検索する、と、『アボリジニ戯曲選』や『ハリウッド脚本術プロになるためのワークショップ101』というような本の存在を知り、即座に注文できます。いやはや、全くもって重宝な道具です。
 九州ブロック事務局長の久保田先生ご生誕の三重町に「エイトピアおおの」という最新鋭の立派な会館ができました。恐れを知らぬ 現大分事務局の阿部証の粘り強い交渉の結果、県大会をそこの主催行事にしてもらい会場費が無料になりました。そして昨年、仏の里として多くの名刹を数える国東に「アストくにさき」がオープン。今度は向こうから「国東演劇祭」への有り難い誘い。その演劇祭の一環に夏季講習会の至れり尽せりの便宜を図っていただけるのだ。これは嬉しい、と、目下新たな趣向を鋭意検討中。加えて、大分で国民文化祭が開催されたのをきっかけに3年前から文化活動のジャンルごとの研修に県が補助金を出してくれるようになりました。数多いジャンルにもかかわらず、演劇は毎年申請して既にワークショップを2回開催しました。  このように場所は増え、活動はやりやすくなり、数年前に比べ演劇は状況的には恵まれつつあります。
 ところが、しかし、弟図らざれば兄図らんや、演劇部生徒の減少、大会への参加校の減少が続いているのです。大分は地区大会なしの県大会のみで、3日間で上演します。一時期は十校、十一校、六校の日程で、十一校の二日目は夕食が8時過ぎ。舞台がどれも粒ぞろいならまだしも、とにかく飲食禁止のホール内の講師席にはありとあらゆる「眠気覚まし」が届けられたもんです。まさに審査員殺し、講師苛め。それが今では、釣瓶落としの夕暮れ時には風呂に入ってる有様。おかげで、生徒の合評会を宿で開催、それなりの成果 を挙げてはいるものの、熱気と慌しさが生むゾクゾク感に乏しいのが寂しい。
 でも、悲嘆にくれても仕方ない。これからは絶対演劇の時代なんだと信じ、いずれのために全体を見直し、考え、整備し、顧問の足腰を鍛えておきなさいという神の配慮だと考えることにしましょう。  そして、こういう時だからこそいいことを数えた方が心の健康にはよい。熱心な若い顧問も増えている。『高校演劇セレクション』の二〇〇一年、二〇〇二年版には大分の作品がそれぞれ二本掲載されている。学校の演劇鑑賞に招かれる学校が増え、高校より中学の方が多いのも楽しみな兆候かもしれない。そして、卒業生、顧問による公演も増えている。そして大会講師に招かれ、それぞれの大会に行ったり、来たりで他県との交流がかなり濃密になりつつある。これはマクベス夫人の子どもの数を数えるようなことだろうか。否。とにかく、より高くジャンプするために、今はたまたま腰を落としただけなのです。
(大分県高等学校文化連盟 前 演劇部長)


滋賀県より
   宇野 正隆  

 昨年の秋、近畿大会(和歌山大会)に参加してきた。各県の代表である素晴らしい舞台や部員と顧問が一団となって運営する姿もさることながら、意外に印象に残ったのがロビーにおいてある『ご自由にお食べ下さい』のミカンの箱であった。休憩の度に、ミカンを食べながら感想を言い合う姿があちこちで見られた。
 さて、滋賀県で同じことをするとしたら何になるだろう。よく話題に上るのは鮒寿司。まさかこれを『ご自由に……』というわけにはいくまい。好き嫌いが激しい割には、一匹で一万円ぐらいする代物であり、破産してしまう。信楽のタヌキの置物?近江牛?長浜のガラス細工?――どれもふさわしくない。そこで考えた。そもそも滋賀の特色とは何だろうか。
 四十七都道府県中三十三番――上演校の多さの順。多い方とはいえまい。近畿(大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山)の中でも、六府県中四番。やはり多くもなく少なくもなく中途半端である。
 では、最近の上演の傾向はどうか? 生徒減少に伴い、実は加盟校は毎年一〜二校ずつ減ってきている。が、上演校数は大体二十七校ぐらいで落ち着いている。つまり、少ないながらも上演するところは安定して毎年上演できているわけだ。その中で、創作の占める割合を調べてみた。ここ五年の間にじわじわと上昇している。しかも、生徒創作が平成九年に三本だけだったのが、平成十三年には十五本になっている!《滋賀は生徒創作が増えている》――これが特色ではないだろうか。
 もちろん既成に比べると、拙い部分も多いと思う(自分も創作をしているので、生徒だけでなく自分自身に対する自戒も含めての感想だが)。が、既成を仕上げる力がなくなったとマイナスでとらえるよりも、あがきながら何とか自分で作品を作っていこうというパワーの湧出のように感じたい。名産・特色といって紹介することが難しい滋賀であるが、創作によって演劇を作り出していこうというベクトルが急上昇している県だと言えるかもしれない。
 最後に宣伝をひとつ。本年、滋賀県にて近畿大会が開催される(十一月二十二日(金) より三日間、草津文化芸術会館にて。JR南草津駅より徒歩一〇分)。ぜひとも足を運んでいただけることを期待している。 (滋賀県高演協事務局長)

◎ 参考まで――滋賀県は3つの地区に分け、それぞれの地区で上位2校を選出する。計6校により県大会を行い、上位 1校を決定するという仕組みになっている。今年で三十六回目の大会となる。