復刊95号  WEB版


第48回 神奈川大会によせて 永嶋 達夫  

 第48回全国高等学校演劇協議会全国大会は、本年八月神奈川県において第26回全国高等学校総合文化祭(高総文祭)の演劇専門部と一体となって開催される。
 参加上演校は例年と同じく全国各ブロックより推薦の11校でありそれぞれの地区予選を経ての全国大会出場ということで、また、充実した舞台の展開が強く期待をされるところである。
 昨今は学校教育における課外部活動の果たす役割の大きさはそこから育つ多くの可能性を秘めた生徒たちの活動によって変わらぬ 意義の深さが実態である一方で、青少年の学校外活動の発展、併せて学校五日制の実施に伴なう校外活動の機会の増加、さらにはまだ一部の部門ではあるが民間のクラブや訓練・養成機関への傾斜など、時代の変化の進む中にあっても、高校演劇の世界がやはり全国二千数百校を仲間として、着実な芝居作りを楽しみ、競っている現実はまことに頼もしい限りである。
 とは言うものの、実際にはなかなか客観条件には厳しいものがあるのも事実である。人数や予算の面 の苦労はいつの時代も変わらぬものであろう。それが潤沢になればよりよいのは当然だが、そういう苦しい中でこそ純粋に良いものを追求してきたという面 もあろう。 新学習指導要領の中の総合的学習の内容として演劇活動もふさわしいものの一つとして挙げられ、そのことに異論はないが、そういう解釈や位 置付けが付いたから演劇が発展するというのもいささか不本意な感じがする。
 同様のことが教員の活動、例えば出張扱いにも言えそうである。課外部活動というだけでの出張はなかなかしにくく、何か公的な大会といった条件が必要になってくる。それだけならば理解できるが、高校演劇の大会というよりも、高文連の大会の方が通 りが良いのがかなりの実態のようである。民間活力を活かし、規制緩和、地方の時代と言われながら、実際には中央の力と提携し、公的なお墨み付きが有効となる空気は必ずしも払拭されていないのではないか。払拭するのが良いかどうかでなく、より良いものを実現していくときにその主体となる力や組織への支援こそが最も大切なことではないかと思う。
 そのことでは、高文連も法人化され、にもかかわらず国の予算補助によるバックアップはまことに有難いことである。民間の力と言ってもまだ十分にそういうシステムになっていない日本の社会にあっては、まずこのような呼び水を流してくださることはたいへん有効な支援策と思われる。  今後はその発展のためにも、必ずしも前例主義にこだわることなく、その年々、その地域ごとの特色、専門分野のもつ特性に応じた柔軟な態勢でもって一層の進展を図っていきたいところである。
 ところで本年の会場となる神奈川県相模原市は東京に隣接し首都圏のまっ只中にあって、急速な住宅の発展とともに都市化した新興の街である。また、横浜から湘南地区までを含む神奈川のもつ豊かで明かるい進歩性・開放性のイメージとともに、そこでの新らたな出会いと発見が楽しみである。
 生徒交流会、特別講演、五分科会による講習会、審査員講評、顧問総会・研修会等、代表校の上演と並んでの指導者講習会及び全員参加の学習・研修の機会とその内容の充実もまた有意義な学習として位 置付け、稔り多い成果が期待される。演劇を通しての同志のよい触れ合いの機会であってほしい。 (全国高等学校演劇協議会会長)   (学校法人十文字学園 十文字中・高等学校校長)