復刊96号  WEB版


第一分科会 《ワークショップ》

「スピリチュアル システムによる 『魂の台詞・演技』」 講師 鶉野 樹里

 講習会第一分科会ワークショップは、県立相模大野高校格技場でも行われた。講師は劇団俳優座の鶉野樹里先生。参加生徒は約七〇名。  最初に『魂の台詞・演技』の習得上達に不可欠とされる「スピリチュアル・システム」について説明があった。人間の体内にはガン細胞や心因性のストレス等を攻撃して身体を守るナチュラルキラー細胞(NK細胞)が存在する。このNK細胞は増殖活性化すると身体や精神を解放して感受性や創造力を豊かにさせる効果もあるとされている。このNK細胞の増殖活性化に最も効果的な方法がなんと『笑い』なのだそうだ。 ◆実技1  豊かな感受性のある『魂の台詞・演技』を習得するために、「は・ひ・ふ・へ・ほ」のそれぞれの『笑い』を参加者に体験させて、その相違を感じ取らせた。
◆実技2 「愛してる。」「ふざけるな。」「ありがとう。」の三語が提示され、参加生徒に任意に一語を選ばせる。次に、数分間時間を与えて、選んだ語の具体的表現方法について、ありとあらゆる状況をイメージさせた。その後、数名を指名してそれぞれのイメージを表現させた。この具体的状況想定こそが『魂を込める』ことなのだそうだ。個々の表現について状況の事前説明は一切ない。常に鶉野先生は「見る側はどんな場面を連想するか。」と参加生徒に感想を求めた。演じる側と見る側とのイメージの一致は至難の業だが、中にはかなり近いイメージのものもあり、全国大会出場校の豊かな感性に感心させられた。
◆実技3   任意に選ばせた三語でそれぞれ二〇人前後のクループができた。グループ内で自由に相談させてそれぞれの語について一言によるパフォーマンスを発表させた。構想時間は充分ではなかったが、中には構成の妙を感じさせる発表もあった。
 酷暑の中、条件の悪い会場での講習会であったが、分かり易く丁寧に指導して下さった鶉野先生、参加生徒の熱意に支えられて時間内で無事終了できたことを感謝したい。


 第一分科会 《ワークショップ》 「イメージを共有する」 講師 平田オリザ

 参加者希望者が多数でしたので、出場校からの二〇名ほどが実際に体を動かし、それを見学するという形のワークショップでした。
 まず「仲間を作り、信頼関係を作る」ゲームです。好きな色、好きな果物などを大声で言い合って仲間を見つけ、その仲間を背中に乗っけたり、体を倒すのを受け止めたりして、仲間との信頼関係を「体で」感じるゲームをしました。
 次にカードを使って即興で役を作り、一人一人言葉に対するイメージが違うことを実感するゲームをしました。「活発の程度が違う」趣味を設定して、同程度と思った人をみつけます。同じものでも活発と感じるか、おとなしいと感じるか、人によって差があることを体験しました。  キャッチボール、長縄跳びをボールなし、縄なしでやってみます。『動作をする側がイメージを共有していないと、観客側にイメージが伝わらないし、世の中にはイメージしやすいものとそうでないものがあります。』しやすいものからしにくいものへと観客に伝えたいものにたどりつくプロセスを大事にしながら、まず動作する側でイメージを共有し、どう表現したら伝わるかを考えていきます。
 『高度なイメージを共有するには技術が必要です。』
 テキストを使って実際に芝居をしてみます。せりふをしっかり伝えようとして力が入りがちですが『俳優は普段どういうふうに人とはなしているかに「気づく」ことが出発点です。そして演技を組みたてていくのです。』  『演出家は観客の想像力を広げる所で間を取ります。広げた想像力は必ず閉じます。観客に想像させる所とストーリーを説明する所をうまく構成してメリハリをつけるのです。』
 『俳優が台本に向かう時に背中を押してやるのが演出家であり、俳優は演出家が何を考えているのかを理解する事が大切です。』
 『頭のやわらかいうちに本を読んだり芝居を見たりして他人の人生に触れ、自分の言葉を広げる事、そして自分の言葉にする事がとても大切な事です。』