復刊99号 福井(鯖江)大会特集号  WEB版


生徒講評委員会活動報告 

 私達は今回、全国大会では初の生徒講評委員会を、試行という形で設けました。生徒講評委員会の活動については、まだまだ疑問を感じていらっしゃる方も多いと思いますが、そのような方々にこそ、私達の活動内容について知っていただきたいと思います。
 まず、講評委員の主な活動内容について説明します。私達講評委員は、第一に、高校生が演じた劇を同じ高校生としての立場から素直に観賞し、共感したことや学んだことについて話し合います。第二に、劇を観賞した他の高校生に、私達はこの劇のこの部分をこう見た、ということを提案することで、他の高校生がその劇について深く考えることを促がします。第三に、劇を観賞した一般の方々に対し、大人と生徒との見解の差異を明らかにし、生じていた誤解をなくしていきます。
 ここで注意していただきたいのは、私達は劇に関してあれこれと批評することが目的ではない、ということです。もちろん私達は、演技の未熟さや台本の不完全さなどについて細かく指摘することもできます。むしろその部分のほうが表に出やすい分、指摘しやすいほどです。しかし敢えてそれをしないのは、講評委員の理念として、劇を肯定的に理解していこう、というものが私達の念頭にあるからです。私達講評委員は、観る側の人間ではありますが、普段は演じる側にいます。そのため、演技や照明の至らなさよりも、劇全体を通して何を感じとったかということの方が、上演校は知りたいだろう、と考えるからです。このように、講評活動を通して、互いに高めあっていこう、ということが、私達の活動方針なのです。
 しかし、このような活動について、講評委員の中で意見の食い違いが生じました。それは、劇全体の雰囲気を大切にするあまり、演技自体を深くみていないのではないか、ということです。つまり、講評委員の理念に基づいて、共感したこと、学んだことを話し合うのはとてもいいことだけれど、時々劇と離れた所に話がいってしまうため、もっと演技を観て感じたことを中心に話し合うべきではないか、という意見が出たのです。この意見は講評活動の後半に出たものであったため、委員達の間で詳しく話し合うことができませんでしたが、講評活動の根本に関わってくる問題です。この点についてより深く考慮していくことが、今後の課題であると考えています。 また、もう一つの問題点として、私達の文章力のなさが担当の先生方から挙げられました。委員はみんなすごくいい意見をもっていて、話し合いは大変充実した活発なものとなるのに、いざ講評文を書くとなると書けない、ということが多々あったからです。これは、自分達の気持ちを適格に表現する言葉が見つからない、ということもありますが、講評文を書くことに対して不慣れであることも挙げられると考えられます。やはり各地方での大会等で講評委員を設けることが、今は最優先事項ではないかと思います。
 このように、今回の活動でいくつかの問題点は生じたものの、私達は全国での講評委員会への第一歩を踏み出しました。普段、地域の講評委員会では聞けない幅広い意見が聞けて、演劇の中だけではなく、実生活の中でも意識が変えさせられるほどに感化させられました。委員の中からも、「私達が大人になった時、この体験はすごく生きてくると思う。」という言葉が出ました。まさに私達は、互いに高め合うとができたのです。そのような点で、今回試行としての講評委員活動は成功だったと私は考えています。
 これから高校演劇の質をより一層高めていくためには、生徒達の間で、学校も都道府県も地方も越えた「学習の場」を設けることが、一番の近道であると私達は考えています。今後、講評委員会という「劇に学び、劇に返す」活動を導入・継続していくことを切実に願っています。